ペット医療コラム

【vol.182】ペットが腫瘍治療中の飼い主さんの 不安を和らげるために

6月、北海道では新緑季節、景色のどのカットを観ても映えますね。ペットを連れて外に出かけたいですね。
さてここ何回か腫瘍のことについて書いてきました。今回は腫瘍の治療中の不安を少しでも和らげるために、紹介してきた本『猫の「がん」〜正しく知って、向き合う〜ねこねっこ出版』に掲載されているQ&Aとうちの診察室で相談されることを少しご紹介しましょう。
Q:怖がりで病院が苦手な愛猫。治療で私のことを嫌いにならないか心配です。
A:検査や治療など猫ちゃんに嫌われることをするのは私たち獣医師です(本当は嫌われたくないけど、、)。猫ちゃんにとって飼い主さんは安全地帯。むしろより好きになってくれるかもしれません。ご家族と猫ちゃんが最終的にハッピーになってくれれば良いと思います。
Q:インターネットでいろいろ情報が見られるが、自分の選択が正しかったか不安になることがあります。
A:良いことも悪いことも情報は溢れています。正しい情報だけとも限りません。画面の向こうではなく、目の前の愛猫がおかれている状況を見て、リアルな獣医師や動物看護師に伝え、ご自分の気持ちを少しずつ整理し、この子にとって良いことを選択していくことが良いでしょう。これまでも書いたように最新の治療が最善とは限りません。
Q:高齢の愛猫が癌になり手術を勧められました。体力的に心配ですし、金銭的にも厳しく、積極的な治療に踏み切れません。
A:飼い主さんによって考え方や事情は違います。病気を受け止め、根治治療はせず、お別れを言うときまで家で穏やかに過ごすこともとてもいい選択かと思います。その場合でも緩和治療をしてあげることは可能です。担当の獣医師とよく相談し、より良い方法を選んでいきましょう。獣医師はその選択を尊重し治療にあたります。
Q:セカンドオピニオンを受けたいのいですが、かかりつけ医が気を悪くしないでしょうか?
A:獣医医療分野でもセカンドオピニオンはよく行われるようになっています。かかりつけ医は広範囲な病気を診ます。専門医がいる二次診療施設では最新情報をもとに、ご家族の要望に合わせて診断・治療の選択肢を一緒に考えてくれるます。むしろ積極的にセカンドオピニオンを推奨してくれる獣医師の方が信頼できると思います。
Q:「がんに効く」というサプリメントは、積極的に与えていいのもなのでしょうか?
A:がんが治らないまでも、サプリで少しでも楽にしてあげたいお気持ちはよく理解できます。サプリメントはいわゆる健康補助食品で、その成分の品質や量も保証されていません。中には奇跡的にサプリでがんが治ったとネットで紹介されているものもありますが、必ずしもサプリが効いたと言い切れません。他の薬剤が投与されていたり、もともと免疫力が高いなど、別の要因もあって奇跡が起こったレアなケースかもしれません。過度に期待することは避けた方が良いかと思います。それより緩和治療のところでも述べたように「痛みを緩和」して、良質な食事を食べる方がはるかに大切です。
日々診察室では様々な相談を受けます。ペットのがんの治療を行っている飼い主さんはとても献身的に看てくれています。しかし飼い主さんが自分の生活をしっかりと維持することも大切です。疲れ切ってしまったら笑顔がなくなります。ペットたちは飼い主さんの笑顔と優しい声かけが大好きなのですから!

■著者 アース動物病院 院長 上田 広之 氏

  2022/05/30   M I
≪ 【vol.181】がんの緩和治療について  |  【vol.183】第26回日本獣医がん学会に参加して 〜腫瘍の緩和的手術〜 ≫