2月を迎え、1年でもっとも寒い時期となりましたが、いかがお過ごしでしょうか。私は寒い日の朝、川から上がる水蒸気が木々についた霧氷の輝きが大好きです。北海道っていいですね。
前回は膝関節の中にある前十字靭帯の断裂についてお話しました。今回は同じく膝関節を支えている膝蓋骨(いわゆる皿)の脱臼についてお話をします。膝蓋骨脱臼は、様々な犬種で発生しますが、特に遺伝的な素因があるトイ・プードル、ポメラニアン、ヨークシャー・テリア、チワワ、マルチーズなどの小型犬によく見られます。長年にわたって適正な交配などの対策が講じられ、徐々に少なくなってきてました。しかし、最近はこれらの犬種のミックス犬も多くなり、この病気が再び多くなっており心配しています。
膝蓋骨脱臼は4段階のグレードがあり、グレードにより対処が変わります。グレード1では、脱臼しても自然と正常な状態に戻ることが多く、ほとんど無症状です。グレード2では、時々脱臼した足を浮かせて跛行しますが、簡単に整復できることが多く、日常生活にそれほど大きな支障はありません。脱臼・整復(皿が出入り)をするときに後ろ脚がコキっとすることで気づくことが多いです。グレード2も放置すると、骨が変形し、靭帯が伸びるなどしてグレード3に進行することがあります。グレード3では、常に脱臼していることが多く、整復できてもすぐに脱臼した状態になるため、脱臼した側の足を挙げて跛行することが多くなります。グレード4では、常に脱臼し、整復ができず、ひざを曲げたままの状態で歩くといった歩行異常が見られるようになります。グレード3以上が手術の対象になりますが、グレード4は骨の変形を伴っていますので、専門医による手術が必要となります。手術しないでいると関節炎、筋肉の萎縮、前回お伝えした前十字靭帯断裂を併発することもあります。
子犬の頃にワクチンなどの予防医療を行うために動物病院に行かれるかと思います。獣医師は全身の身体検査を行いますのでその時に指摘されるかもしれません。骨や関節が出来上がる前の出来るだけ早い時期に見つけることができるとグレード2までであれば、グレードが進行しないようにI-Z運動などのリハビリを飼い主さんがすることができます。獣医師や愛玩動物看護師から指導を受けると良いでしょう。また膝に負担をかけないようにすることが重要になります。フローリングなどの硬くてすべりやすい床は膝への負担がかかりやすいので、特に小型犬の子犬を室内飼育する場合は、じゅうたんやマットなどを敷くと良いです。そしてワンちゃんたちと遊ぶことはとっても楽しいのですが、急激に膝に負担がかかるボール遊びや他のワンちゃんとのジャレあいなどはいわゆる「オダツ」状態になりますので避けるようにしてください。
膝の病気一つだけ取り上げても、時代の変化・要請や先人たちの苦労を感じます。ペットは人が改良してきた動物です。それだけにペットへの責任があります。出来るだけ動物たちにとって良いことを考え、行動することが大切です。昨年西東京市のある動物病院へ見学に行きました。「動物を飼うと世界は絶対に平和になる」と院長は言ってました。できることをやっていきたいと思います。
■著者 アース動物病院 院長 上田 広之 氏