ペット医療コラム

【vol.194】猫の内部寄生虫 (特に消化管内寄生虫)について

 今年は桜の開花も早く、比較的穏やかに季節が進んでいるようです。暖かい日にはペットたちと散歩に出掛けてみるのも良いかと思います。ペットたち喜びますよ。ただし事故や逃亡の危険性があるので、猫は外へ出さないで室内で日向ぼっこかな。
最新ペットたちの消化管内寄生虫を見かける機会が多くなっています。保護猫活動をお手伝いし外猫たちと会うことが多くなったせいかと思います。行政や多くの保護団体、ボランティアさんたちの働きもあり、いろんな経過を経て、施設に収容されたり、動物病院で避妊去勢手術を施されたりする猫たちが多くなっています。そこで私たちは排泄物や肛門を観察するので、寄生虫に会うことが多くなったのです。
グラコムでも何回か書かせていただきましたが、ダニ、マダニ、耳ヒゼンダニなどを外部寄生虫と言います。体内に寄生するものを内部寄生虫と言います。その中で消化管に寄生するものを「消化管内寄生虫」と言います。私たちも子供の頃、検便をしたと思いますが、消化管内寄生虫を調べていたのです。内部寄生虫は多くの種類が存在し、姿形、起こさせる症状、寄生部位(消化管内、腸絨毛の細胞、赤血球、肝臓など)、感染経路も様々です。生まれる前に母猫から胎盤感染することもあります。成猫ではほとんど症状のないこともありますが、下痢や嘔吐の原因となったり、死亡する恐れのある内部寄生虫もいます。子猫の時期は下痢・嘔吐などの病気の原因になるだけでなく、成長の妨げとなることもあります。猫の主な消化管内寄生虫は回虫、鉤虫、糞線虫、瓜実条虫、マンソン裂頭条虫、コクシジウム、ジアルジアなどです。
内部寄生虫の検出には、顕微鏡で直接便中の虫体や虫卵を見つける方法や、比重の差を利用して虫卵などを浮遊させる方法などがあります。虫卵の排泄時期や猫の体調・免疫力の状態によっては検出されにくいこともあります。また検便で使用する便の量が限られていることや、寄生虫ごとに最適な検出方法が異なることなどから実際に検出できる割合は低いとされており、一度の検便では検出されないことがあります。何度か検便をした方がいいでしょう。特に子猫の時期は入念な検査が必要です。
消化管内寄生虫は人に感染することもあります。消化器症状は少なく、幼虫のまま体内を移動することによる症状が多いです。幼虫が侵入した臓器によって症状は異なりますが、内臓移行型では、発熱や倦怠感、食欲不振などが主な症状です。眼移行型では、網膜脈絡炎、網膜内腫瘤、ブドウ膜炎などの症状が現れます。しびれや麻痺を引き起こす神経型や、アレルギーを発症させる潜在型といわれる新しいタイプも確認されています。予防はペットたちのしっかりとした駆虫、触れ合った後や排泄物処置後の手洗い、キスなどは避けることでしょう。
この管内でも多くの譲渡会が開催されています。参加している猫たちは検便、駆虫、ワクチンなどがすでに終わっている子たちがほとんどです。ただし駆虫については100%ではありませんので、受け入れられた後も検便をすることをお勧めします。新しく家族として迎えてくれる出会いを猫たちは待っています。ぜひお立ち寄りください。

■著者 アース動物病院 院長 上田 広之 氏

  2024/05/24   M I
≪ 【vol.193】北海道動物愛護センター本格稼働へ  |  【vol.195】夏に注意したいこと 〜特にシニア犬〜 ≫