ペット医療コラム

【vol.195】夏に注意したいこと 〜特にシニア犬〜

一番暑い季節を迎えました。今年はいわゆる「リラ冷え」がなく夏を迎えたように思います。
ヒトと同様にペットも高齢化になってきています。北海道の夏は短いですが、シニア犬の暑さ対策について書こうと思います。
ほとんどの犬は汗をかきません。暑さを感じると、ハアハアと口を開けて呼吸を早くして体の熱を外に逃がそうとしますが、気温や湿度が高すぎると体の熱を逃がし切れずに、熱をため込んでしまいます。特にシニア犬はこの体温調節が苦手なので熱中症になりやすいです。最近の北海道でも夏日になることが多いですが、シニア犬は暑さに気がつく能力の低下から、室内でも熱中症になりやすいです。エアコン設定は26℃前後、湿度60%以下にして室温を管理した方がいいでしょう。ハウス(ケージ)の上に凍らせたペットボトルやアイスノンを置いたり、扇風機で風を送るのもおすすめです。しかし、ヒトもそうですが、冷やしすぎもNGです。シニア犬が、冷やしすぎた室内やエアコンの風が直接当たる場所で過ごすことで、体調不良を起こすことがあります。犬には直接風が当たらない工夫をするとか、室内を自由に移動できるようにした方がいいでしょう。
脱水を防ぐためにも新鮮な水を十分に与えて水分補給をさせることが大切です。水を飲みたがらないシニア犬は水分の多い食事などで工夫するとよいです。
運動量や基礎代謝が低下したシニア犬に、若い頃と同じ食事量を与えると太りやすくなるので、シニア用のフードを与えて運動不足にも気をつけましょう。肥満で皮下脂肪が多くなると、体の熱を発散しにくくなるので体重管理は大切です。運動不足にならないように散歩は重要ですし、犬たちも楽しみにしています。しかし、散歩する時間帯には注意です。真夏の日中は気温も高く、アスファルトも熱くなるので、早朝や日が落ちて道路が熱くない時間帯を選んでいただきたいです。日中に散歩に行くと肉球が火傷することもあります。
シニア犬は体力や筋肉、内臓の機能が低下して老化が進んでいきます。定期的な健康診断を受けることをお勧めします。甲状腺機能低下症や心臓・腎臓・肝臓などの病気も隠れていることがあります。早く対処することで長生きできるようになろうかと思います。また今まで以上に声をかけたり、体に触れてコミュニケーションをとり体調を把握して、普段と違うところがないか、変化にいち早く気がつけるようにしましょう。体重や寝ているときの呼吸数(1分間)、水の飲む量など数字をメモしておくと変化に気づきやすいかと思います。シニア犬が夏に受けるダメージや夏バテの対策を行って、元気に秋を迎えたいものです。
参考記事「犬のきもち」

■著者 アース動物病院 院長 上田 広之 氏

  2024/07/22   M I
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