師走を迎え、お忙しい毎日をお過ごしかと思います。新型コロナに加えインフルエンザも流行っています。どうかお気をつけてお過ごしください。
数年前から、グリーフケアについて少しずつ学んできました。アメリカでは以前から注目されていましたが、日本では5年くらい前からになるでしょうか。「グリーフ」とはかけがえのない大切な存在を失ったときの、誰にでも起こる自然な心と身体の反応を意味します。心理学用語で、直訳すると「悲嘆」です。「ペットロス」もそのなかの一つであり、ペットを失った後の状態を示します。今回10月から学び直しをしていますので少しだけお話しさせてください。
室内犬が増え、猫の飼育頭数も増えて「ペットは家族」と言われて久しいです。また様々な災害を経験したり、新型コロナ感染症を経験したり、その他にもお一人お一人に訪れるグリーフを抱えるなかでペットの存在はますます大きくなっているように感じます。10月1日の動物愛護週間関連事業「動物からのプレゼント 私たちができる動物愛護とは」でもお伝えしましたが、ペットが私たちに届けてくれるプレゼントは無限大だからです。
強く愛すればこそ深い悲しみを感じます。愛するペットがいつもと違う表情を見せた時、言葉を話さない彼らを見て、ただただ不安を感じます。また、愛するペットが予期せぬ病気を宣告されたり、治る見込みがないと告げられたら、どれほど大きなショックを受けるでしょう。多くの飼い主様は、その「グリーフ」を1人で抱えて、どうしてよいのか戸惑い、不安や恐怖、自責の念にかられながら苦悩の日々を送られています。「飼い主へのグリーフケア」とは飼い主が持っている、内側の悲しみや苦しみの感情を吐き出せる環境を作り、その心を受け止め、支えになっていくことです。しかし簡単にできることではありません。
一方、ペットも「グリーフ」を感じます。ペットは人に出会い暮らしている動物です。飼い主さんのことが大好きです。家族の表情が変化する時、その理由が分からないがゆえに「どうしたのかな?」「不安になってきた」と強く感じます。このように「当たり前に日常」がなくなることでペットにグリーフが生まれます。ペットがグリーフを抱えると、表情が沈む、緊張し、震えたり、トイレを失敗したり、食欲が低下したり、消化器症状や膀胱炎、膵炎などにもなります。グリーフの悪循環に陥ってしまいます。実際にはなかなか難しいことですが、ペットが病気になっても「当たり前の日常」を維持することが大切になってきます。これが「ペットのためのグリーフケア」になります。
ペットが病気になったとき、まずはご自分のグリーフを理解し、ありのままの気持ちを話せる方に相談し、お一人で抱え込まないことが大切です。ペットの治療に関してはなるべく早期の緩和とペットが怖がらない方法を選択してください。そしてどんな時もペットから見える景色を意識し、主役は今まで通り〇〇ちゃんであり、「当たり前の日常」をできるだけ守ってあげてください。
これからは「動物を診る動物医療」から「絆」中心の医療へ変化し、「動物も人も幸せにする動物医療」が求められていくでしょう。動物病院も変化していきます。
■著者 アース動物病院 院長 上田 広之 氏