ペット医療コラム

【vol.190】動物愛護週間は終わりましたが 〜4年ぶりの関連事業再開〜

 動物愛護管理法では、国民の間に広く動物の愛護と適正な飼養についての理解と関心を深めていただくため、9月20日から26日を動物愛護週間と定め、国、地方自治体、関係団体が協力して、動物の愛護と管理に関する普及啓発のための各種行事を実施することになっています。コロナ禍で3年間実施されませんでしたが、今年は各地で市民を交えた動物愛護フェスティバルが再開されました。札幌や江別では数百人規模のイベントになっています。動物愛護週間は終わりましたが、オホーツク管内では10月1日にオホーツク総合振興局 オホーツク獣医師会、北見市犬猫愛護協議会 非営利型一般社団法人アニウェル北海道の共催で北見市相内住民センターにて13時から16時まで行われます。
コロナ禍で、外に出ることが少なくなり、リモートワークも増え、家にいることが多くなったせいか、2020年から2021年にかけて新しくペットを飼う方が増えました。ペットは「癒し」「かわいさ」「温かさ」「幸せホルモン」などをもたらしてくれます。そしてペットを飼うことにより「心穏やかになる」「家族の絆が強まった」「ストレスを抱えること減った」「寂しさを感じることが減った」「人との会話増えた」「定期的な運動するため健康になった」「命の儚さを知った」などの効果があります。このようにペットたちはたくさんのプレゼントを私たちに届けてくれています。
ペットの飼育頭数は2003年をピークに年々減少しています。そんな中、新しくペットを迎い入れる方が増えてきましたが、飼育に向けた検討行動には変化があるようです。インターネットから情報を見ることが当たり前になり、動物愛護団体や保健所、シェルターが配信しているSNSや里親募集サイトを通して、保護犬・猫を飼育しようかなと検討されている方が多くなっています。そして実際にどこからペットを迎入れたかというと、犬はペットショップ52%、ブリーダー直接24%、譲渡会・シェルター・保護犬は9%でした。猫は譲渡会・シェルター・保護猫が48%、知人から譲り受けた27%、ペットショップ17%との報告があります。動物福祉先進国である欧米のようにペットショップでの購入が減り、生まれ育った場所がわかるブリーダーからの購入とか保護犬・猫の譲り受けが増えてくるかもしれません。
迷い猫・犬を迎入れ、ペットとして終生飼われる方も多くいらっしゃいます。これも立派な動物愛護だと思います。最近では高齢化、一人暮らし世帯の増加、経済的問題により、ペットの飼育を放棄したり、繁殖制限ができず多頭飼育崩壊になるケースも多発しています。野良猫問題も深刻です。以前より保護が必要な猫・犬が増加しています。北見市では30年以上前からほぼ毎年動物愛護週間中に「犬猫の新しい飼い主さん探し」を行ってきましたが、とてもこれでは追いつかない数になっています。様々なルートから保護された犬猫を飼養して人に慣らしたり、栄養をつけ、虫下し、病気の予防や避妊去勢手術まで施して「新しい飼い主へ届ける」活動が最近は行われるようになりました。活動のスタイルは猫カフェだったり、譲渡会だったり、SNS情報発信などですが、手段は違っても、目的は「処分するのではなく、保護、飼養して新しい家族のもとへ届ける」に近いものだと思います。携わる人の考え方、キャパシティも違うのでむしろ色んなスタイルがあった方が出会いのチャンスが多くなり良いかと思います。
10月1日は市民公開講座「動物からのプレゼント 私たちができる動物愛護とは」をテーマに行います。最近動物愛護活動を始めた方、永年全道規模で動物愛護活動を行っている方も交え、動物愛護の原点を考えてみたいと思います。

■著者 アース動物病院 院長 上田 広之 氏

  2023/09/26   M I
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