6月になりますとライラックも咲き、初夏を感じる季節になります。気温も上がってきますので、わんちゃんたちの皮膚のトラブルが増える時期にもなります。 気温、湿気に加えて、生い茂った草むらに入ったりして皮膚に細かな傷ができるとそこで細菌が急激に増えひどい皮膚炎になります。急性湿性皮膚炎と言いますがこの時期にとても多い疾患です。他の季節にできる皮膚炎と違い、急激な広がりと臭いを伴います。治療をしないと広がりますので気をつけてください。 少し落ち着いてきてますが、シラカバ、クリなどの花粉でアレルギー症状を出す犬たちもいます。いわゆる「花粉症」ですね。犬の花粉症の主症状は、人と違いくしゃみや結膜炎は多くなく皮膚炎です。かゆみや、皮膚の炎症が起きるため、身体の一部または全身を舐めたり掻いたりします。 舐めることで、さらに炎症が広がるため、できるだけ早く治療してあげるのが良いです。ちなみに猫は人に似た症状になることがあります。治療は人と同様、根本的に治療することができる確実な方法はありませんので、症状を抑えるための「対症療法」がメインとなります。犬は「掻いたらだめ」と言ってもやめてはくれません。掻くことでさらに炎症が広がるのを防ぐため、エリザベスカラーやわんちゃん用の服を着て、悪化を防ぐことができる可能性があります。もっとも重要な対処法は、「アレルゲンを避ける」ことです。・花粉の飛散が多い時間の散歩や外出を控える・散歩後は愛犬の身体を拭いてあげる・ブラッシングはこまめにしてあげる・シャンプーの頻度を増やす・飼い主さんが帰宅した際、家の中に花粉を持ち込まないようにする・家の中の掃除はいつも以上に念入りに(掃除機+水拭きまで)ちょっと大変ですが、秋までは頑張って続けて欲しいものです。 またしつこいと言われそうですが、マダニにも気をつけてください。マダニはある種の細菌やウイルスを移す可能性がありますし、マダニに咬まれるだけでも皮膚炎を起こします。人のライム病と違い遊走性紅斑までは起こしませんが、局所的に跡が残るほどの皮膚炎になります。マダニのピークは正に今ですが、秋までは咬まれる可能性がありますので、病院で予防薬を処方していただいてください。 ワンちゃんの表面を頭から足の先まで触ってみたり、わんちゃんの行動を観察すると前述した異常に気づくことが多いです。場合によっては皮膚や表から触ることのできるリンパ節にできる腫瘍に気づかれるかもしれません。皮膚の悪性腫瘍の代表例は、脂肪腫、肥満細胞腫、リンパ腫、組織球性肉腫などです。悪性腫瘍でもさほど進行していない時は、元気や食欲には目立った変化がなく、なかなか気づきにくいので、日々のスキンシップで「何かできものができている」という発見がとても大切になります。できる対策をとりながら夏を楽しみましょう!
■著者 アース動物病院 院長 上田 広之 氏