今年は春の訪れが早いと各地から聞こえてきます。西暦604年にできたと言われている日本の暦。四季がしっかりと分かれている日本では、それぞれの四季をさらに6つに分けて二十四節気(にじゅうしせっき)という季節を表す言葉が用いられています。その中で啓蟄(けいちつ:土の中の生き物たちが再び活動をはじめる)晴明(せいめい:花が咲き鳥たちが歌う)小満(しょうまん:植物・動物たちにも活気あふれる)大雪(たいせつ:動物たちも冬ごもり)などは動物たちの行動を表しています。さらに二十四節気を三等分した七十二候では、鶏始乳、雀始巣、厥魚群など、より具体的な動物たちの活動を表しています。こういった暦から農作業が始まり、海では出港の準備をし、関連産業も動きはじめるのでしょう。特に一次産業が盛んな北海道は季節を感じることができる素晴らしい大地だと感じています。
ペットたちも暖かくなると嬉しいようです。私たちよりも季節の変化を敏感に感じているのではないでしょうか。日の出も早くなってきたので朝早くから散歩に行こうとせがまれませんか?できるだけ応えてあげたいですね。飼い主にとっては定期的な運動にもなりますし、散歩コースで会う人たちと挨拶を交わし、ハッピーな気持ちになります。ペットと暮らすだけで血圧が安定するデータもあります。
一方、注意も必要です。雪の下に埋もれていたものが表に出てきます。食べ残したお菓子、ビニールの袋、缶、タバコの吸い殻そしてペットの糞など。それらを口にしてしまうワンちゃん達。福寿草やスイセン、チューリップなども咲きはじめますがそれ自体に毒性があります。また除草剤とか農薬が撒かれた草を知らないうちに食べてしまい中毒になる場合もあります。これらが原因で動物病院に駆け込んで来られるケースが春はとても多いです。このように悲しいかな春はマナーの悪さを感じる季節でもありますが、飼い主さんたちには何が危険なのか知っていただき、十分に気をつけていただきたいものです。 また啓蟄も過ぎましたので、虫たちも活発に動き出します。雪がとけ、草木が表に出てくるとその枝葉にはマダニが潜んでいます。近くに動物がくると咬着して血を吸いはじめます。昨年犬がマダニに咬まれた場所をアンケートしましたが市街地が38%と最も多く、日常の散歩コースにマダニは潜んでいることが分かりました。ライム病などマダニから移る病気もありますので、事前に予防しておくことをお勧めします。
傍にいるペットたちと季節を感じながら過ごしていきたいものです。さあ春を感じに散歩してきますか!
■著者 アース動物病院 院長 上田 広之 氏