新年が明けて、1ヶ月が過ぎました。オホーツク地方は流氷が来ると寒さが一段と厳しくなってきます。冬に多いペットたちの病気についていくつか書いてみます。人にも共通することがありますが、冬になるとどんなことが起こるか考えてみましょう。
気温が下がり、空気が乾燥しやすい冬は、鼻や喉の粘膜の機能が落ちて、さまざまな刺激を受けやすくなります。また季節性のインフルエンザのように、ウイルスは低温・乾燥を好みますので、冬の間に増殖する傾向にあります。両方が相まって感染しやすくなります。犬ではめっぽう少なくなりましたが、ジステンパーやパラインフルエンザ。猫ではヘルペスウイルス感染症やカリシウイルス感染症などが冬に多くなる感染症です。予防するためには、それぞれが入ったワクチンを接種することはもちろん、ウイルスや細菌は、閉めきった部屋に充満してしまいますので、時々窓を開けて、外のきれいな空気を部屋に取り入れるなど、室内飼いの場合は通気をよくすることが必要です。また、適度に部屋の湿度を保つことは、咳などの症状をやわらげるのに役立ちますので加湿器を上手に使うといいでしょう。また咳という症状は同じでも心臓疾患からくる咳もあります。特に小型犬が高齢になって急に咳が出るようになったら、要注意です。冬は冷たい空気によって呼吸器が刺激され、急に冷え込んだ時などに咳が出やすくなりますので、病気発見の機会だと思って、愛犬の様子に充分注意してみましょう。
寒くなってくると、散歩に出かける回数も減り、動かないので、喉もあまり渇かず、水を飲む量は夏に比べて激減します。水を飲まないと尿があまり出ないことからくる泌尿器系疾患も多くなります。一般的に、尿道の短いメスは膀胱炎にかかりやすく、反対に尿道の長いオスは、その尿道が先細りのため、結石が尿道につまって排尿困難になりやすいです。病気を早く見つけるためには、排尿するときに痛そうにしたり、いつもに比べて時間がかかってないか、尿の量や回数が増えていないか、色に変化はないか?などを気にしてください。あまり水の量が減っていないと感じたら、いつもの水にひと工夫を加え、その子が好む肉汁などを飲み水に少量加えてみるとたくさん飲んでくれるかと思います。散歩が必要な犬は、寒さのために、ついつい散歩を怠りがちになります。散歩のときにしかトイレをしない習慣のついている犬は、ずっとオシッコを我慢してしまうことになりますので、そのぶん病気になりやすくなります。子犬の頃から家のなかでオシッコができる習慣をつけておけば安心かと思います。
寒くて、あまり動かなくなっているとき、筋肉や関節が温まっていない状態で、いきなり走ったら危険です。特に高齢犬や太り気味の子は注意が必要です。捻挫や関節炎を起こしやすく、急に動かなくなったり、足を上げるようになります。また特にダックス・フントがよく発症する椎間板ヘルニアも冬に多いです。見つける一つのポイントですが、足先の甲を床に着けるようにしてそのまま足が元に戻らなくなったら脊髄神経麻痺が疑われます。一過性で治る場合はいいのですが、長引いたり、痛みを伴う場合は病院へ行かれると良いです。また、ご心配でしょうが不用意に触ると噛まれることがあるので、声をかけながら優しく触ってあげてください。
このように冬に多い病気があります。上手に乗り越え、温かい春には元気に一緒に遊べるようになることを願っています。
■著者 アース動物病院 院長 上田 広之 氏