ペット医療コラム

【vol.98】体に優しい抗がん剤の使い方

師走を迎え、今年も残り僅かですね。 11月の中旬大阪で動物臨床医学会があり、特別講演でCW.ニコルさんの話を聴きました。 かねてから森がもたらすヒトも含めた生き物への効果を語り、森作りをされています。 震災後、東松島で森の中に小学校をボランティアで作り始めているそうです。 いろいろなエピソードを交えたその話に、会場の獣医師や動物看護師は涙流してました。 今回はこの学会で聞いてきたことを少し書かせてください。
動物たちも癌になります。この学会でも60ほどの発表がありました。 その治療は、手術、抗がん剤、放射線療法などが中心となります。 その流れは大きくは変わりません。 しかし、一般開業医だけでなく、大学でも体に優しい抗がん剤の使い方をする発表がありました。 今までは、その動物が耐えられる最大の投与量を目指して抗がん剤を投与してました。 下痢や嘔吐、骨髄抑制などの副作用も何割かはあります。 当然ながら副作用が出ることがかわいそうで、ペットたちに抗がん剤を使うことを躊躇する飼主さんがいらっしゃいました。
今回、休眠療法、メトロノーム療法、低用量化学療法の多くの発表が紹介されました。 これは今までの投与量の1/10から1/2の量を間隔を空けないで使うというものです。 癌が成長するためには、栄養を与える血管が必要です。 正常より脆い血管ですが、無数の血管が癌の周りに作られます。 この栄養血管が作られるのを阻害し癌が成長するのを妨げるようです。
また、ある程度は癌細胞を傷つけますが、そのことによりその癌に対する免疫を高めるようです。 もちろん、正常細胞への影響はわずかで、ほとんど副作用はありません。 今回は血管肉腫、骨肉腫への使用例で、その効果は従来の方法と同等というものでした。 まだまだメジャーではありませんが、選択肢の一つとして考えていきたいと思いました。 さらにもっと優しい癌の治療が出てくることを願います。 冬も森に出かけ楽しみたいと思います。クマゲラに会えるといいなぁ。

  2012/12/28   gracom
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