ようやく長い冬が終わり春らしくなってきて桜の便りがそこまで来ています。ところで私たち獣医師は別なことで春到来を感じます。外での狂犬病予防注射です。普段病院の中で診療をしており、なかなか外での仕事はないのですが狂犬病の集合注射にいくと雪解け、フキノトウ、ヒバリの声、農作業や運動会の音などを聞くことができいよいよ春が来たと感じる訳です。
そこで少しだけ狂犬病の話をしておこうと思います。狂犬病は全てのほ乳類もちろん人間も感染する病気の代表格です。病原体ウィルスはだ液の中に含まれ咬まれると感染します。潜伏期は犬で3~8週間。怒りっぽく、何でも噛み付くようになり、喉の筋肉が麻痺するため、だ液を垂れ流すようになり、末期は痙攣、昏睡し平均3日で死亡します。人の潜伏期は1~3ヶ月ときに1年。犬と同様な症状を呈し治療法がないため100%死亡します。現在でも世界中で4~5万人の方が死亡しています。
日本は狂犬病予防法にもとづき輸入動物は検疫所で調べ水際で防ぎ、飼主さんが市町村に犬を登録し、年に1回の予防接種をうけることを義務づけているためその発生は1956年以来ありません。世界的にも稀な国となっています。だからといって油断してはいけないと思います。近隣の国は狂犬病発生国ですし、検疫所のない港湾例えば網走とか紋別での犬の不法上陸の可能性、輸入動物の増加、密輸の可能性など。以前より増してその危険性は高くなっています。
さらに予防接種率の低下がより危険率を上げていると思われます。たまに「室内犬だから注射はうたなくともいい」と飼主さんから聞きますが、危険性はほぼ同じだと思いますし、一緒におこなう登録(犬の戸籍)をすることで迷い犬になった時や交通事故に遭ったときに飼主捜しに役に立ちますし、狂犬病発生時に速やかな連絡対応ができます。ひとたび発生するとどうなるでしょう?人間への対処、交通規制、未接種犬への対処など混乱が生じます。「狂犬病予防接種をやるということは犬の予防のみならず人の生命を守ることに貢献」していることとなるのです。
今回は少し硬い話になってしまいました。ではまた。
協力:北見市獣医師会