ペット医療コラム

【vol.86】命あるものの温かさ〜いっしょにいる時が愛おしい〜

師走になり、お忙しい日々が続いていることと思います。 動物たちへの冬支度は万全ですか?
今年も本コラムを読んでいただきありがとうございました。
11月16日のニュースで「ジュニア」ちゃんのことが報道されたのを覚えていますか? 北海道は15日から初雪。降り出しは例年より遅かったですが、予期せず突然の大雪。 奈井江町でおじいちゃんがお孫さんを乗せて車で出かけ、スリップして河川敷に転落してしまいました。 窓ガラスも割れ、寒い夜一晩過ごしました。家族は安否もわからず、ご心配されたことでしょう。
翌朝、無事発見されました。お二人と一晩中一緒に居たのが7歳雄のラブラドール・レトリーバー「ジュニア」。 報道ではジュニアがお孫さんを抱いて暖めてくれたと賞賛されていました。 大変な状況だったと思いますが、心温まる話です。 犬の体温は38~39度、人より2、3度高いので、お二人はなんとか助かったのだと思います。
一方ジュニアも、とても不安だったと思います。 お孫さんを何とか暖めようと思ったかもしれませんが、自分も家族であるおじいちゃん、お孫さんと触れ合っていたかったのだと思います。 東日本大震災で奇跡の犬と報道された「バンちゃん」。 3週間も流された屋根の上で過ごしましたが、家族と再会したときの喜びようは今も思い起こされます。ともに過ごした時間。それまでの生活があればこその絆なのでしょう。
今年100歳になられた聖路加病院名誉院長の日野原重明先生は、全国の小学校で「いのちの授業」を続けています。 「いのち」の事を先生は子供たちにどう説明しているかというと、いのちは見えないし、さわれないし、感じられません。 子供たちに「時間は見えるかい?」って聞くのです。 「昨日も今日も見えないけど、寝たり、勉強したり、遊んだりするのは、きみたちの持っている時間を使っているだよ。時間を使っていることが、きみたちが生きている証拠。時間の中にいのちがあるんだよ」と、伝えています。 ともに過ごした時間が愛おしい。家族、動物たち、友、そして多くの飼い主さんたち。使える時間をさらに大切にしたいと思う1年でした。

  2011/12/28   gracom
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