ペット医療コラム

【vol.107】犬や猫の輸血・献血について~ボランティアさんに支えられて~

9月になり、収穫の秋を迎えています。今年は春の訪れが遅く、作物の成長時期の小雨、猛暑の夏、収穫前の雨と気候に左右された農作業だったのではないでしょうか。それぞれの作物の出来が心配です。
さて今回は犬や猫の輸血・献血について書きます。犬や猫のペットたちが伴侶動物と認識されるようになり、以前よりもヒトとともに生活することが多くなりました。今まで気づかなかった、ちょっとした犬や猫の変化にも気づくようになり、病気の早期発見、早期治療が出来るようになってきました。また、良質な食事や伝染病予防の徹底、そして室内飼いの増加などにより、犬や猫の寿命も延びてきています。
そんな中、貧血で来院されるケースが多くなっているように思います。徐々に進行した貧血なら、何となく元気がないということで気づかれることでしょう。一方、急激に進行した場合は誰もが気づくと思います。その原因は様々です。長生きするようになって多くなっている貧血の原因は、腫瘍です。腫瘍で貧血をおこすのは、血液の腫瘍である白血病が代表的です。血液を作る骨の中(骨髄)で異常な白血病細胞が増加し、正常な血液の細胞を押しやり、造血機能が低下し貧血となります。多くはゆっくりと進行して行きます。また、様々な臓器に腫瘍ができ、それが大きくなることで血液を腫瘍に取られたり、長引く炎症からエネルギーを消耗し貧血になります。こちらもゆっくりと進行して行きますが、腫瘍が大きくなり過ぎたり、脆い腫瘍は突然破裂します。出血により胸の中やお腹の中が血液でいっぱいになり、急激な貧血で虚脱してしまいます。腫瘍以外にも貧血になります。自分の血液を自分のものとして認識せず、攻撃が始まる病気(自己免疫性血液疾患)による貧血。様々な原因で、出血が止まりづらくなる病気による貧血。そして、まだまだ多い交通事故により臓器破裂をおこし貧血になります。
血液のうち血球(細胞)成分の割合をヘマトクリットHtと言います。通常は犬が40~55%、猫が30~40%ぐらいです。輸血を必要とするタイミングは急性なのかゆっくりした貧血なのかによって違いますが、おおむね15~20%以下になると輸血を考えておかなければなりません。医療領域で行われている日赤血液センターのような輸血用血液の供給システムは動物医療にはありません。大学病院や大きな病院で独自のシステムとガイドラインを作っているところもあるようですが、一般的ではありません。地方ではボランティアさんと健康な飼犬・飼猫さんに協力いただいています。おかげさまで多くの命が助かっています。この場を借りてお礼申し上げます。

  2013/09/28   gracom
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