ペット医療コラム

【vol.153】お盆を迎えて~動物医療とグリーフケア~

残暑お見舞い申し上げます。7月は真夏日が10日間も続き、体調を崩された方、ペットたちも多かったと思います。その後いかがお過ごしでしょうか?
8月はお盆を迎え、ご先祖の供養し、思い出話をする時期ですね。ペットを飼われている飼主さんの約8割はペットたちを家族と捉えています。そんな家族同然のペットもいつかは亡くなります。飼主さんのことが大好きで、信頼しきっている愛しいペットたちが亡くなることは飼主家族にとってはとても悲しく、辛いことです。
グリーフケアって聞いたことがありますか?グリーフとは悲嘆のことで、それを乗り越え、立ち直り、再び日常生活に適応していくことを見守っていくことをグリーフケアと言います。人の医療分野ではホスピス・緩和ケア病棟で行われているようです。
では動物医療分野ではいかがでしょう。徐々にではありますが、広がりつつあります。以前から「ペットロス」については研究され、それに対応する取り組みがなされて来ました。その進化形が「グリーフケア」になると思います。
私も勉強したてで、詳しくはお話できませんが、お盆の月でもありますので、動物医療におけるグリーフケアについて説明させていただきます。人の考えや感情の93%は、言葉ではないところで相手に伝わるとされています。一方、共通の言語を持たないペットと飼い主のコミュニケーションは100%非言語で行われています。表情やしぐさ、声の調子、言葉の響きなどで人はペットに自分の心情を伝え、ペットはそれを敏感に察知してくれ、表情に表し、心を通わせてくれます。つまりペットたちに穏やかに安心して暮らしてもらうためには、飼主さんの心のケアを行い、穏やかな声や表情、優しいしぐさでいられるようにしていくことが大切です。今までの動物病院の役割は、病気の治療や予防を行うことが中心でしたが、ペットにまつわる人の不安、自分にとって大切なものを失ったり、失うかもしれないという悲嘆(グリーフ)の発生原因を知り、いろいろなグリーフで現れる反応を理解し、傾聴、共感して、飼主さんの心もように対処すること(グリーフケア)も新たに求められるようになりました。ペットの幸せは、飼主さんの笑顔がないと成立しないのです。と簡単に書いているのですが、実践するには難しいことがあります。さらに勉強していきたいと考えています。
内閣府の調査によりますとペットを飼っていない方は約6割です。飼っていない方は動物医療のグリーフケアの必要性はなかなか理解できないかもしれません。グリーフとは「ごく自然に現れる心と身体の反応」であります。少なくとも奇異なことだとは思わないでほしいものです。もし悲しいことに直面した時、話を聞いていただけるだけでも、その方は、辛く苦しい時期を早く乗り越えられることでしょう。どうかよろしくお願いします。

  2017/08/28   gracom
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