ペット医療コラム

【vol.53】犬のお産~特に帝王切開について~

最近、我が家にも新しい子犬がやってきました。愛くるしいマナコ、次々に新しいことを覚える能力に今更ながら感動してます。この子の様に無事に産まれてきてイタズラしながらも元気に育ってほしいと思い、今回は雌にとって大変な出産の話をしたいと思います。  一年中お産はあるのですが、特にこれからの時期に多くなる傾向にあります。「犬の妊娠とお産」については本編の16回にも書きましたが、特に今回は帝王切開について書きましょう。
最近ペットたちは飼主さんに大事に扱われ、時に人間の子供以上に過保護にされているケースも見受けられます。  そうなりますと運動不足、肥満、栄養のアンバランスなどが多くみられ、さらに精神的に弱く飼主さんが何でもわがままを聞いてくれるため、出産に対する本能や母性愛の低下がみられます。  結果として難産、子育ての拒否などの増加がみられます。そういうことから、「安産の神様」と言われていた犬たちにも獣医師の手が必要となることが多くなってきています。
さて出産に対する心構えですが、やはり日頃面倒をみている飼主さんが事前に分娩の正しい知識を身に付けてほしいと思います。出産予定日の確認と予定日の3日ほど前には動物病院でレントゲンをとり胎児数、大きさ、逆子などの確認をしておいた方がいいと思います。また、その頃からこまめに体温を測定しておくとよいでしょう。肛門で37.2度になり、それが続くといよいよ出産です。  簡単な難産の判定ですが、72日以上の長期妊娠、30分間以上強い陣痛があるにもかかわらず胎子が娩出されない場合、2~4時間以上弱い陣痛が持続し娩出がない場合、破水してから90分以上して出産しない場合、まだ出産していないのに暗緑色のおりものや出血がみられた場合、母親の状態が悪化した場合などです。  そうなったら動物病院に連絡をとってください。といっても緊急の対応が出来ない場合もありますので、日頃から行きつけの病院と連絡を取り合っておくべきでしょう。病院では母体の状態、レントゲンや触診での胎児の体勢、エコーで胎児の心拍数などを確認し、帝王切開の適応基準であれば手術をすすめます。
しかし、手術のリスクやコスト、飼い主さんの希望などにも左右されるのが現実です。また、最近ではこの地方でもフレンチブルドッグなど短頭種を飼われる方が増え、いわゆる計画的手術、待機手術を選択される方もいらっしゃいます。  緊急時より胎児救命率が高く、麻酔管理の進歩もあり安全性が向上したとの報告もあります。
手術中はいろいろなことが起こります。事前の説明を受けるのはもちろんですが、緊急なことに備えて待合室には待機していただいた方がいいと思います。  そして無事に産まれてきた子どもを抱くことはこの上ない喜びとなることでしょう。  みんな無事に産まれてくるといいですね。

  2008/11/28   gracom
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