ペット医療コラム

【vol.76】足の長~いワンちゃん!骨折らないでね!~前腕骨の骨折~

12月師走を迎え、一年が終わろうとしてます。今年もお世話になりました。 皆さんと動物たちが健康に年を越せることをお祈りいたします。 11月6、7日札幌で北海道小動物獣医師会の年次大会がありました。 全道の伴侶動物の治療を行っている獣医師約250名、動物看護師(学生も含め)約330名、そして企業の皆さんも合わせて約660名が集まる大会です。
企画も準備も私たち獣医師が行う手作りの大会です。
今回わたしは舞台裏で支える役割でしたが、一つだけセミナーを聞くことができました。 「成長期の犬猫における整形外科疾患」です。
その中でも、前腕骨(肘と手首の間の骨)については興味あるお話を聞くことが出来ました。 小型犬のこの場所の骨折は以前から多かったのですが、今までの方法ではうまく骨がつかない犬たちが全国的に多くなってきたようです。 それは飼われている犬種の変化が大きく影響しています。 フィギュアスケートの浅田真央さんが飼っているエアロちゃんが有名ですが、プードルが急速に増えています。 また、イタリアングレーハウンドも増えています。 この2犬種の骨折が増加しているようです。
これらの2犬種をご存じの方はお分かりだと思いますが、とても足が長く、甘えん坊の性格で、遊び好きで好奇心旺盛です。 中にはいわゆる落ち着かない子もいます。 その他に前腕骨の骨折が多い犬種はパピオン、ポメラニアン、チワワなどがいますが、プードルとイタリアングレーハウンドは特別です。 骨が長く細いため骨折しやすく、また、骨の周囲の筋肉量も少ないため、外的ショックを和らげることが乏しく骨折しやすいようです。
さらに前腕骨の先端の方は骨髄腔が非常に狭く、血液供給が少なく、一旦骨折をしてしまうと骨の再生力が他の犬種より弱いようです。 また、犬たちが非常に活発で、落ち着きがないことで骨折部位が不安定になりやすいというのが、この2つの犬種に対して最も気をつけなければならない点です。 実際、私もプードルとイタリアングレーハウンドの前腕骨折でうまくいかなかった経験があります。 再手術は飼主さんもワンちゃんも大きな負担です。 講習会ではこれらの骨折の手術に対するポイントを聞いて来ましたが、骨折しないでいただけるのが一番いいことです。
成長期の十分な栄養、子犬の頃の経験と周りの環境への慣れ、十分な休息、感情の起伏を予防するためでもある避妊去勢手術の実施、簡単な命令(待て、お座り、ハウス)が出来るようにしつけること、ソファーから飛び降りただけで骨折する子がいますので着地付近を滑らないようにするとか工夫が必要です。

  2010/12/28   gracom
≪ 【vol.75】秋の講習会を振り返って~すばらしい出会いがありました~  |  【vol.77】ウサギ年を迎えて~とってもデリケートな動物~ ≫