今回は、寒冷地と循環器疾患についてお話しします。
心血管疾患は気温変動の影響を受けやすく、寒冷・暑熱の暴露が死亡リスクを増加させます。 寒冷により血圧が上昇し、冬季の血圧管理が特に高齢者にとって重要です。 また心不全は寒冷により悪化しやすく、冬季は入院率が増加し、感染症や気温変動にも注意が必要です。
厚生労働省発表の死亡統計
月別の死亡数、その原因疾患、性別、年齢別でみると、40歳代~90歳以上の高齢者まで、どの年齢層においても、男女ともに5月~8月の暖かい季節は心疾患のリスクが少なく、12月~2月の冬場はリスクが上昇しています。そして若年層に比べ、高齢になればなるほど冬場に心疾患のピークで、季節が強く影響していることが分かります。
寒冷による影響
冬場にさまざまな心血管疾患発症を引き起こす原因として血圧との関係が指摘されています。血圧は一日中同じ値を保っているわけではなく、上がったり下がったりしています。特に、気温による血圧の変動は1~2月に大きく、寒冷刺激により血管が収縮し、血圧があがることや冬季の塩分摂取量の増加が大きく影響しています。高齢者や男性、肥満の人では血圧の変動が大きく、気温だけでなく、日照時間の関与や運動量、ストレスなどの影響も指摘されています。
また、冬場は身体を動かす機会が減り、急激な冷えや気温差により、中性脂肪やコレステロールなどの脂質代謝の異常も起こりやすくなります。 ヒートショック
冬に心筋梗塞が多い理由のひとつとして「寒冷期の血圧の上昇、特に暖かい屋内から特に寒い部屋や屋外に移動する際の血圧の急激な変動」を挙げられます。
ヒートショックといわれるストレスが心臓の負担を増やし心筋梗塞を起こしやすくなります。特に高齢者ではその影響が大きいため、高齢者世帯や、高齢者を抱える世帯では、寒冷に対する対策をしましょう。
具体的には、トイレや洗面所、浴室、寝室など、室内でも10℃以上の温度変化が大きいことが予想される場所で適切な暖房器具の使用を心がけ、外出時にはコートや手袋など、防寒着の着用を心がけましょう。
次回からは、数回にわたって『食事』についてお話ししたいと思います。