予防医学コラム

光干渉断層血管撮影(OCTA)ついて

前回のコラムでは、眼をスキャンして網膜などの立体画像を作る光干渉断層計(OCT)が眼科医療を大きく変えたと書きました。このOCTはここ10年で更に進化を遂げ、「毛細血管」まで撮影できるようになりました。これがOCTによる血管撮影(アンギオグラフィ)、つまり「OCT angiography(OCTA)」です。原理を説明すると難しくなりますが、高速スキャンで「血液が流れている血管を抜き出して画像化できる」ようになったとご理解下さい。眼底写真でも血管は見えていますが、毛細血管までは写りません。また、造影剤を注射する「蛍光眼底造影検査」では造影剤が血管に行き渡る様子から、毛細血管の状態を判断しますが、造影剤はアレルギーによるアナフィラキシーショックなど、万が一の重篤な合併症があります。 OCTAでは造影剤を使わないので安全であり、毛細血管まで美しく観察できるため、まさに眼科医が待ち望んでいた革新技術なのです。私はOCTAの創成期から研究・開発に携わり、教科書や専門書など多数の執筆をしてきました。
【OCTAの凄さ】
OCTAでは三次元の画像が得られています。よって二次元の造影検査では分解できない、網膜の「層別」の毛細血管を抜き出して評価することができます。つまり、網膜表層の血管の病気なのか、深い層の血管の病気なのかなど、今まで診断するのが困難だった病態を知ることができます。また、異常な「新生血管」は、造影検査では「造影剤が漏れることで新生血管と判断する」という読み方をしていましたが、OCTAでは「新生血管そのものが写る、形が評価できる」ため、診断能力が向上しました。これまで「造影検査が必要だから」と大病院に即紹介されていたような重症糖尿病網膜症や加齢黄斑変性症なども、今ではクリニックでOCTAを用いて正確に評価ができるようになってきました。
【OCTAの注意点】
このように革新的なOCTAですが、造影剤を使わないため、「造影剤が漏れる」などという所見はとれません。そのため、炎症性の病気、例えば「ぶどう膜炎」などは、OCTAでの評価に不向きです。つまり造影検査が100%不要になるわけではないのです。またOCTAは最先端技術なので、OCTの機種によりOCTAの撮影能力は大きく異なります。3〜6㎜程度の小さな画角しか撮れないもの、撮影成功率が低く、撮影時間も長過ぎる機種など様々です。当院では最新で最高スペックのCanon製OCTを導入しており、最大23㎜画角という「(超)広角OCTA」を高速撮影できます。これにより、広範囲の眼底血管画像を得ることで、糖尿病網膜症や網膜静脈閉塞症など、眼底の血管が壊れる病気の重症度などを正確に診断しています。それをもとに、レーザーや硝子体注射、硝子体手術などをそのまま自院で行っており、難症例に対してもクリニックで十分治療できる時代が到来しました!

ishibazawa2407

≪ 今年も暑くなりそうです。  |  心臓カテーテル治療のメリットとデメリット ≫