眼底検査の基本は、あくまでも眼科医自身が直接、細隙灯顕微鏡や倒像鏡で見て観察することです(眼底カメラはそれの記録です)。かつて、偉大な眼科の先人達は、この直接観察から様々な病態を考え、診断を下し、治療法を考えて実践して、今日の眼科医療の礎を築いてきました。そして約30年前、「光干渉断層計(ひかりかんしょうだんそうけい…OCT)」という技術革新が起こり、人体には影響の無い赤外光を用いて、眼をスキャンすることによって、主に網膜などの「断面」を撮影できる、非侵襲的(体に負担が全くない)検査が考案されました。これはいわゆるゲームチェンジャーであり、眼科医療を劇的に変えるものとなりました。その後様々な改良を経て、現在ではわずか数秒で高精細な画像が得られます。ちなみにOCTは循環器や消化器、皮膚科など様々な医療分野でも広く使用されている技術です。
【OCTの凄さ】
眼底検査にて得られるものは、あくまでも二次元的で表面的な情報がほとんどです。一方、OCTで撮影すると、網膜の詳細な層構造を「断面図」や「立体図」として、三次元で得ることができます。例えば、どれだけ網膜が「むくんでいるか(黄斑浮腫)」や、「剥がれているか(網膜剥離)」、「壊れてしまっているか(黄斑変性)」、「真ん中に穴が空いている(黄斑円孔)」、「異常な膜がはっている(網膜前膜)」など、様々な情報を、体に負担ない方法で確実に知ることができます。更に、OCTでは網膜の厚みを測ったり、正常眼と自動で比べたりする機能がついています。例えば、緑内障では視神経が萎縮して、網膜表層の神経線維が薄くなっている箇所を見つけて診断しますが、OCTでは「厚みマップ」機能を使って、神経が薄い場所を客観的に見やすく示せます。また黄斑浮腫では、腫れている網膜が、治療でどれくらい治ったかを数値で示すこともできます。OCTが日常診療で用いられるようになり、眼科医療は飛躍的に進歩しました。
【OCTを使いこなす】
OCTで撮影された画像には、患者さん自身が見てもはっきりと分かる異常が映っており、当院ではこの画像をお見せしながら、診断と治療方針について説明させて頂くのが日常となっております。もちろん、正しい診断には、OCT画像に関する正しい知識が必要です。私は眼科医になりたての頃から、このOCTに魅了され、画像研究を続けて参りました(OCTがなかったら、私は眼科医になっていなかったかもしれません!)。更に通常は6〜9㎜の画角で撮影するところ、当院では23㎜画角という「(超)広角OCT」を用いており、これは現在日本で入手可能な最大画角です。この最高スペックのOCTの性能を最大限引き出し、網膜周辺部の病変も見逃さず、より正確な診断、そして治療に役立てております!