日本の医療制度は、自由開業・自由標榜制(医師の専門性にかかわらず診療科名を自由に標榜できる)、フリーアクセス(患者が受診医療機関を自由に選べる)であり、開設主体は公立・公的が約2割、民間病院が全体の約8割を占めています。国は民間病院も巻き込んだ地域医療構想やかかりつけ医機能の整備などの施策を実施し、2040年を見据えた医療提供体制の整備を進めています。
診療所は1~19床の病床を持つ有床診療所と、無床診療所に分けられます。診療所の開設主体は医療法人等または医師個人で、「〇〇医院」「〇〇クリニック」「〇〇診療所」などの名付けがなされます。
診療科名の広告方法には決まりがあります(病院も同様)。「内科」「外科」は単独で標榜でき、さらに「身体や臓器」「患者の年齢、性別等の特性」「診療方法」「患者の症状、疾患」を組み合わせて広告できます。「脳神経外科」「老年内科」などです。その他、「精神科」「アレルギー科」「リウマチ科」「小児科」「皮膚科」「泌尿器科」「産婦人科」「眼科」「耳鼻いんこう科」「リハビリテーション科」「放射線科」「救急科」「病理診断科」「臨床検査科」も単独の診療科名での広告と組み合わせが可能です。厚生労働省通知では「勤務医1人に対して主たる診療科名を原則2つ以内とし、広告に当たっては主たる診療科名を大きく表示するなど、他の診療科名と区別して表記することが望ましい」とされています。
診療所の施設数は、厚労省の医療施設調査によると10万5182施設(2022年10月)で、このうちほとんどが無床診療所です。有床診療所は1996年には2万施設を超えていましたが、直近では6000施設を割り込むなど減少傾向にあります。一方で有床診療所は、在宅医療の拠点機能や終末期ケア、病院からの早期退院患者の受け入れといった役割も期待されています。
保険薬局とは、健康保険法に基づく療養の給付の一環として、薬剤師が調剤業務を取り扱う薬局、すなわち医師が発行する処方箋に基づいて調剤等を行う薬局です。厚労省の衛生行政報告例によると、薬局数は2022年度末で6万2375施設(前年度比584施設増)であり、増加傾向にあります。
現在患者側は、診療所や病院近辺のいわゆる「門前薬局」に赴き、受診したその時々で違う薬局で薬を受け取ることが多くなっています。こうした現状を受け厚労省は、身近な薬局を一つ決め、薬の受け取りや相談などを行う「かかりつけ薬局」の普及を推進しています。多剤・重複投薬の防止や残薬解消といったメリットに加え、医療費の抑制も期待されており、中長期的な方針を示した「患者のための薬局ビジョン」(厚労省)では、「2025年までに全ての薬局をかかりつけ薬局へ」という目標を掲げています。
その他の医療を提供する施設(医療提供施設)としては、助産師が管理する9床以下の施設の助産所(助産院)、介護老人保健施設、介護医療院、訪問看護ステーションなどがあります。