予防医学コラム

白内障手術について

白内障手術は、我が国で1年間に150万件以上が実施されており、全科の外科手術の中で最多の件数です。視力低下やかすみ、まぶしさなどで日常生活に支障をきたすようになったら手術の適応となります。白内障を溶かして濁りを取るような目薬・飲み薬は無いため、治療には手術という選択肢しかないと考えてください。また、白内障手術は、基本的に「局所麻酔」で完結できます。全身麻酔が必要なのは、手術中に動いてしまったり、安静が保てない小児、認知症などの患者様の場合のみです。また、白内障手術は、原則「日帰り手術」で対応できますので、入院で手術をしたとしても、手術方法は全く同じです。
●水晶体の構造
白内障の手術を理解するには、まず水晶体のつくりを知る必要があります。水晶体の表面の薄い皮のことを嚢(のう)といい、前の皮を前嚢、後ろの皮を後嚢といいます。水晶体の中心には核(かく)があり、核と嚢の間の部分を皮質(ひしつ)といいます。年齢と共に核が硬くなり、皮質は濁ってきて白内障となっていくのです。
●手術方法
点眼などで局所麻酔をして、角膜の付け根あたりに小さな傷を作ります。当院では2.4㎜の極小切開で手術を始めます。次に水晶体の前嚢を適切な大きさで丸く切り抜きます。そして、高性能超音波の掃除機のような機械を使い、核を割って砕いて、吸い取ってきます(超音波乳化吸引術といいます)。皮質も吸い取って嚢をきれいにして、嚢を袋としてその中に人工の「眼内レンズ」を入れます。当院での手術時間は通常5〜7分で終わることがほとんどです。
●注意点
上述の通り、白内障手術は眼科の中で最も多く行われており、手術方法に多少のバリエーションはあるものの、ある意味「完成された手術」です。一方で、この完成された型から外れてしまうと、途端に「難しい手術」となってしまいます。例えば、嚢は極めて薄い膜であるため、破れてしまうと眼内レンズを嚢の袋の中に入れられなくなります。水晶体の破片が目の奥に落ちてしまうこともあります。また、水晶体をぐるっと一周支えている「チン小帯」が弱かったり、ちぎれていると、嚢を袋として使えなくなります。特に核が高度に硬い「成熟白内障」では、高性能な機械と技術を用いて行わないと、嚢に負担がかかり、ちぎれたりしてしまいます。このような場合には、嚢を使わずに眼内レンズを縫い付ける「強膜内固定」という方法などが必要となります(オホーツク眼科では上記のような難症例でも日帰り手術が可能です!)。
次回は、白内障手術で用いる「眼内レンズ」について、徹底解説していきたいと思います!

ishibazawa2312

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