予防医学コラム

心臓のお話し(心臓の構造)

昔から人類は、心臓がなぜ絶えず動き続けられるのか、不思議で仕方がなかったようです。かつては、空気中から取り入れた「生命精気」なるエネルギーが、心臓や動脈を拍動させていると考えられていました。心臓がポンプのような機能を持ち、血液を全身に循環させているという事実が発見されたのは十七世紀以降です。その後、二十世紀前半までにかけて、心拍動の謎が徐々に解明されていきました。
あなたの心臓は、一分間に何回拍動しているだろうか? 個人差、年齢差はあるものの、心臓は一分間におよそ約六〇~七〇回拍動します。ここから算出すると、一日に約八万回、一年に約三〇〇〇万回、八十年間生きるなら一生で約二〇億回以上と、とてつもない数です。
誰もがよく知るように、心臓の拍動はいつも一定ではありません。緊張したり、激しい運動をしたりすると速くなる。こうした調節は、脳から自律神経を通して行われている。「自律」という名の通り、全身のさまざまな生命維持機能を自動調節する神経です。心筋は、腕や足の筋肉と違って、自力でコントロールできません。心臓を動かそうと思って動かしている人はいないし、当然ながら止めることもできません。
心臓は、安静時に毎分約五リットルの血液を送り出す。一方、体全体にある血液の量は、成人でおよそ五リットル。つまり、一分間で血液が全身を一周するということになります。ただし、この量は運動時に大きく変動するため、心拍数が上がるとともに心筋の収縮力も増し、最大で毎分約三五リットルまで拍出量を増やせます。
心臓や血管を専門に見る内科を「循環器内科」と呼びます。心臓から出た血液は全身をぐるぐると「循環」しているからで、循環器内科が担当するのは、心臓だけでなく、血液が循環する系そのものであります。医学の進歩とともに人工心臓や人工血管が登場しましたが、心臓や血管は唯一無二の臓器ですので、日頃のケアのお手伝いができればと思います。

fukuhara2312

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