政府の「骨太方針2015」などで、長期収載品の薬価については、一定期間を経ても後発医薬品への置き換え率が60%未満の先発医薬品を対象に、薬価改定ごとにほぼ一律に薬価(国が決める)を引き下げるルールが薬価制度改革で導入されました。基礎的医薬品については、厚生労働省が15年9月に公表した医薬品産業強化総合戦略で、安定供給の確保を掲げていますが、具体的な要件は定められていないのが現状です。
総合戦略ではこの要件を明確にした上で、最低薬価では製造ラインの改修などのコストが捻出できず、供給の維持が難しい医薬品や、以前に不採算品再算定(医療上の必要性が特に高いが、薬価が著しく低額のために製造販売の継続が困難な医薬品に対して、薬価を引き上げる措置)を受けたものを含めて、必要な措置について検討すべきとしています。実際一律に薬価を下げるため1錠10円を切る薬が増えてきて製造するほど赤字で倒産したりやめたりする製薬会社も増え薬品不足に拍車をかけています。支払い側の委員から「新たな措置を設けるのではなく、基本的には現行の不採算品再算定の制度などの中で対応し、対応しきれないものは製薬企業の収益全体を見ながら、個別に判断すべきでは」という声が上がりました。
一方、診療側委員は「基礎的医薬品は医療に不可欠なもので、安定供給は重要な問題。利益が出なければ他の儲けでカバーせよというのはなじまない」と発言し、意見が分かれた形となりました。日本製薬団体連合会・保険薬価研究委員会としては、現行の課題として、不採算品再算定が複数回適用された品目があること、最低薬価が設定されていない剤形があることなどを説明し、不採算品再算定の確実な適用や最低薬価の区分の新設など現行ルールの拡充を求めたほか「大手ではない、基礎的医薬品を中心に製造販売する企業にとっては、生産ラインなどへの投資を決定する上で薬価が一定程度安定していることが不可欠」として、基礎的医薬品の要件に該当する品目について、薬価を維持する措置の導入を求めた。今年の9月には厚生労働省から「鎮咳薬(咳止め)・去痰薬の在庫逼迫に伴う協力依頼」の通知を受けました。(関連記事…厚労省、鎮咳去痰薬の長期処方を控えるよう要請)。