予防医学コラム

手足口病について

前回はプール熱についてお話したが夏の流行る感染症として手足口病もあります。手足口病とはその名の通り手足や口の中などに発疹のできるウイルス性の感染症です。夏を中心に流行し、7月下旬がピークとなることが多いです。主な患者は4歳以下の子供で、その中でも2歳以下が半数を占めます。
手足口病はコクサッキーウイルスA16、A6、エンテロウイルス71などのエンテロウイルスが原因となり、一度罹ったウイルスに対しては免疫を獲得しますが、原因となるウイルスが複数あることから何度も罹ってしまう可能性があります。
感染経路は咳やくしゃみなどによる飛沫感染と、唾液や便などに含まれるウイルスが手について感染する接触感染です。なお、コクサッキーウイルスもエンテロウイルスも一般的なアルコール除菌は効きにくいです。
手足口病は3〜5日間の潜伏期間ののち、手掌や足、口腔粘膜に水疱性の発疹が現れます。これらの部位だけでなく、肘や膝、臀部にも発疹が現れる場合もあります。発熱がみられるのは患者の約3分の1のみで、それも38度以下のことが多く、39〜40度の熱が出るヘルパンギーナと比べるとやや低めです。ほとんどの場合、これらの症状は数日で治まります。稀にみられる症状としては、髄膜炎や心筋炎、小脳失調症などの合併があります。また、コクサッキーウイルスA6による感染の場合、手足の爪が脱落することが報告されていますがこちらも自然と治ります。
手足口病に対しても特異的な治療はなく、対症療法のみになります。多くは軽症で、発疹は3〜7日で消失します。ただし、合併症が疑われる場合には入院での治療が必要になります。
生活面では口の中に水疱があるために喉越しの良いものを摂るようにしましょう。また、水分不足にならにようこまめな水分摂取も大切です。予防接種などの予防方法もありません。一般的な感染症予防である、手洗いうがいや消毒、混雑を避けることが大切です。また、アルコール消毒が効きにくいため、次亜塩素酸ナトリウムなどの塩素系の消毒剤が効果的です。
そして、症状がなくなってからも3〜4週間ほどは便からもウイルスが排出されるため、排便後やおむつ替えの後はしっかりと手を洗うことが重要です。保育園、学校では予防すべき伝染病には該当していないため、出席停止期間などはありません。日本小児科学会では「本人の全身状態が安定しており、発熱がなく、口腔内の水疱・潰瘍の影響がなく普段の食事がとれる場合は登校(園)可能」としています。  手足口病については長い間ウイルスが排出されて注意が必要なため、日頃からしっかりとした手洗いの習慣をつけることが大切ですね。

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