予防医学コラム

ヘルパンギーナについて

 ヘルパンギーナは6月ごろから増え始め、初夏に流行のピークを迎えることの多いウイルスが原因の疾患です。患者の90%以上が5歳以下でその中でも最も多いのが1歳児です。
主な原因となるのがコクサッキーウイルスA群です。A群のなかでも型が複数に分かれている上に、コクサッキーウイルスB群やエコーウイルスが原因となる場合もあることから、何度も罹ってしまう可能性があります。感染経路は咳やくしゃみなどによる飛沫感染と、唾液や便などに含まれるウイルスが手について感染する接触感染です。
症状としては2〜4日間の潜伏期間ののち、突然39〜40度ほどの高熱が現れます。続いて咽頭痛が現れ、口腔内の奥の方に小さな水疱や発赤ができます。この水疱は数日すると破れて痛みが生じます。この痛みにより子供は飲食することを嫌がって、脱水状態になってしまうこともあります。また、発熱時に熱性けいれんを起こす可能性や稀に無菌性髄膜炎や急性心筋炎などを合併する場合もあります。なお、手足口病と異なり手や足には発疹はできません。
ヘルパンギーナに対しても特異的な治療はなく、対症療法のみになります。そのため、発熱や痛みに対してアセトアミノフェンなどが処方されることがあります。合併症が疑われる場合には入院での治療が必要になります。生活面では水疱があるために刺激があるものや熱い飲食物は避け、喉越しの良いものを摂るようにしましょう。安静に過ごすことで熱は数日で下がり、水疱なども7日程度で治癒する場合が多いです。ヘルパンギーナもまた予防接種などの特異的な予防方法はありません。一般的な感染症予防である、手洗いうがいや消毒、混雑を避けることが大切です。また、コクサッキーウイルスも一般的なアルコール消毒が効きにくいため、次亜塩素酸ナトリウムなどの塩素系の消毒剤が効果的です。ただ、アルコールを酸性やアルカリ性にすることでエンベロープを持たないウイルスも不活化させられるという研究や商品開発も進んでおり、すべてのアルコール消毒が効かないというわけではありません。
保育園、学校については感染症法において5類感染症の定点把握疾患に指定されています。また、学校保健安全法においては第三種学校伝染病に指定されており、「発熱や咽頭・口腔の水疱・潰瘍を伴う急性期は出席停止、治癒期は全身状態が改善すれば登校可」とされていますが、症状が治っても発症後4週間ほどは便からウイルスが排出されており注意が必要なため、保育園によっては出席停止の期間を設けている所もあるようです。
小さな子供は自分で症状を訴えることが難しいため、主な症状や予防法、感染後の注意点などを把握しておき、感染を広めないようにすることが重要な事であると思います。

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