予防医学コラム

プール熱について

 プールで感染することもあることから咽頭結膜熱はプール熱とも呼ばれ、6月ごろから増加し始め、7〜8月の夏季を中心に流行します。ただし夏のみに発生するわけではなく冬に流行したこともあり、1年を通して感染の可能性はあります。12歳以下が主な患者で5歳以下がおよそ6割を占めます。
咽頭結膜熱はアデノウイルスが原因となりますが、アデノウイルスは非常に多くの型があり、2021年の時点で型の数は80を超えています。その中で咽頭結膜熱の原因となるのは主に3型で、他にも2、4、7、11型などによる場合もあります。1度罹ったら安心ではなく、ウイルスの型が複数ある上に、免疫もつきにくいことから何度も罹ってしまう可能性があります。
感染経路は咳やくしゃみによる飛沫感染とタオルの共有など手指を介した接触感染、そして汚染されたプールの水が粘膜に侵入する直接的な感染です。この感染を防ぐためにプール水は適正な遊離残留塩素濃度を保つことが重要です。なお、アデノウイルスは一般的な消毒用アルコールは効きにくいウイルスです。症状としては5〜7日間の潜伏期間ののち、40度近い発熱で発症し、咽頭痛や頭痛、全身倦怠感などの症状が現れます。そして結膜炎や充血、目脂、流涙といった眼症状が片目から始まり、その後もう一方の目に現れることが多いです。これらの症状は3〜7日続き、後頚部のリンパ節の腫れや痛みを伴う場合もあります。また、基礎疾患のある方や乳幼児、高齢者が7型に感染すると重症化や二次感染を併発しやすいと言われています。咽頭結膜熱に対しては特異的な治療はなく対症療法のみになるため、自己免疫で自然と回復することがほとんどです。眼症状が強い場合には眼科での治療が必要になる場合もあります。生活面では高熱や咽頭痛により食欲が落ちているため、脱水に注意して水分をしっかり摂り、喉に刺激にならないような喉越しの良いものを食べましょう。また、予防接種などの特異的な予防方法はありません。一般的な感染症予防である、手洗いうがいや消毒、感染者との密接を避けること(タオルを分けるなど)が大切です。原因ウイルスはアルコール消毒が効きにくいため、次亜塩素酸ナトリウムなどの塩素系の消毒剤が効果的です。そして、症状がなくなってからも感染力は強くないですが3〜4週間ほどは便からウイルスが排出されます。排便後やおむつ替えの後は流水・石鹸でしっかりと手を洗うことが重要です。学校では伝染病の第二種に該当していて主要症状が消失した後2日を経過するまでは出席停止」とされています。
感染初期は感染力が強いウイルスなので、しっかり休み、正しい予防と対策で感染を広めないようにしましょう。

≪ 眼瞼けいれん  |  コンパートメント症候群 ≫