予防医学コラム

腋臭症

腋臭症とはいわゆるワキガのことで、わきが特有な臭いを放つものです。  皮膚にはエクリン腺とアポクリン腺という2種類の汗腺(汗を分泌する器官)があります。腋臭症の原因となるものはアポクリン線で、その汗に含まれる脂質・タンパク質が皮膚常在菌に分解されて特有の臭いが発生します。  アポクリン腺は第二次性徴に伴って思春期に発達します。遺伝的要因、腋毛の量、ストレスや緊張、スポーツによる発汗も臭いの発生に関係しています。
治療はまず、食事、睡眠、喫煙、衣服などの生活習慣を見直すことから始まります。入浴や、制汗剤・デオドランド製品、アルコール綿の使用は一時的な消臭効果があります。脱毛は、毛を作り出す細胞を破壊しますが、アポクリン線を破壊することはできないので、直接の治療効果はありません。しかし汗の拡散が抑えられるため若干の消臭効果が見込まれます。多汗症に対する外用療法、ボツリヌス菌注射による発汗抑制についても同様です。  動物性食品の摂取は、皮脂分泌を増加させるため腋臭を強くすると言われています。衣服は天然素材のものが臭いが籠りにくいようです。
手術適応になるのは臭いが強い場合です。皮膚の下のアポクリン線をこそぎ取るような手術が行われます。他にもマイクロ波などの治療もある程度有効です。
臭いの悩みはとてもデリケートな問題です。感じ方には個人差があるので、家族に指摘されて受診しますが、本人は自覚がないため治療を許容しづらい場合があります。客観的には臭いの程度がごく軽く、気にしすぎのこともあります。自臭症といって、周りから嫌悪感を抱かれるほどの体臭を発していると思い込んでしまう精神的な疾患であることもあります。病院を受診する方はデオドランド製品などを使用していて臭いがほとんどないことも多く、本人の訴えだけでは判断が難しいことがあります。
日本人の10%程度が腋臭症と考えられていますが、西欧やアフリカ系の人種では9割を超えています。世界的には腋臭症体質の人種の方が多く、ある程度生理現象として認識されています。

渡邊先生コラム2307

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