予防医学コラム

プレドニンと芍薬甘草湯は禁忌!?

プレドニンを服用中で最近こむら返りをよく起こして、こむら返りによく使われる漢方薬の芍薬甘草湯が処方され、一般的に添付文章上では併用禁忌薬はないことから、この場合プレドニンと併用することは問題ないと考えられます。
患者さんの直近の血圧や血清K濃度が基準範囲内で推移していて、芍薬甘草湯の禁忌疾患であるアルドステロン症や低K血症に該当しないと考え、これらの点からも同薬の投与は問題ないと評価することが出来ます。  しかし、プレドニンの処方元の診療科が神経内科であったため、同薬がミオパチーの治療を目的に処方されている可能性を考え、念のため患者に確認をすると、ミオパチーの1種である多発性筋炎に対して服用していることが判明しました。芍薬甘草湯は、疾患や症状を悪化させる恐れがあるためミオパチーのある患者に禁忌となっています。
つまり、芍薬甘草湯はプレドニンという薬剤自体は併用禁忌に該当しない一方、同薬の服用目的であるミオパチーという疾患に対しては禁忌に該当します。
そこで、芍薬甘草湯を処方した医師に疑義照会したところ、医師は、患者が多発性筋炎であることは認識していたものの、多発性筋炎は芍薬甘草湯の投与禁忌に該当するとの認識はなかったことが判明し、芍薬甘草湯は中止となりました。
代替策として、水分やカリウムなどの電解質を適度に摂取することや就寝時に足を冷やさないこと、重たい布団を掛けないようにするなど、一般的な生活指導を行うことで患者のこむら返りは改善しました。
併用薬という「モノ」ばかりを見るのではなく、「ヒト(=疾患)」にも目を向ける必要があるという併用薬確認の難しさ、奥深さに改めて気付かされた1例でした。
理論上、全ての筋疾患はミオパチーですが、日本を含む多くの国では、慣習的に筋ジストロフィー以外の筋疾患のことをミオパチーと呼んでいます。このミオパチーには、先天性、代謝性、炎症性、内分泌性、薬剤性など、様々な種類のものがあり、本症例が治療中であった多発性筋炎は、炎症性ミオパチーに該当します。
また、薬剤性ミオパチーでは、プレドニンによってもミオパチーが起こることが知られています(ステロイド性ミオパチー)。ステロイド治療中の多発性筋炎患者の症状が悪化した場合には、病状の悪化か薬剤性かの鑑別が必要となります。
薬の併用による副作用を防ぐには、他院から処方されている薬やその服用目的を自己判断せずに、お医者さんや薬剤師にしっかり伝える事が大切です。

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