予防医学コラム

化学熱傷

 化学熱傷とは、刺激性の高い物質が接触した結果、やけどのように皮膚が傷つくことです。 原因物質としては、酸、アルカリ、有機溶剤、金属化合物、ガスなど多岐に渡ります。 原因物質の特性や濃度、温度、接触時間により程度は変わりますが、通常のやけどと同じように発赤や水疱・びらん、場合によっては組織の深いところにまで損傷が及びます。ある程度の潜伏期間があったり、経皮的な吸収による全身症状が起こることもあります。 化学熱傷は職業上起こることが多いものですが、家庭で使う洗剤・漂白剤・消毒薬などの身近な薬品でも起きることがあります。 具体的な例としては、 ・洗剤が足にかかったことに気づかずに ・ゴム手袋のなかに漂白剤が入ったことに気づかずに ・ポケットに入れたジッポライターからオイルが漏れて ・汚染された衣服を軽くすすいだ後に着用を続けて ・民間療法としてお酢、ニンニク、草花を皮膚に貼り付けて など 化学熱傷では、普通のやけどと違って触れた瞬間に刺激が弱い物質もあるため、気づかずに処置が遅れて思わぬ重傷につながることもあります。 治療として最も優先されることは原因物質の除去です。衣類を脱いで大量の流水で洗浄します。粉や粒子が付着していればブラシで落とします。洗浄は最低30分以上が推奨されます。爪と指の間が盲点なので忘れずに洗いましょう。 中和剤(酸に対してアルカリなど)は、中和反応の際に発生する熱や、中和剤自体の組織障害性があるため、特別な場合を除いて使用しません。 現場で十分に洗浄した後は医療機関を受診してください。その際は原因物質が分かれば医師に伝えられると良いでしょう。

 

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