予防医学コラム

薬を飲むときは

 なぜ薬を飲むときに水なしで飲むのは良くないのでしょうか?  水なしでの服用が良くない理由は2つあります。一つは薬が食道などに付着した時に、鎮痛薬などでは炎症や潰瘍の原因となることがあります。もう一つは、薬は水に溶けた状態を前提に効果を見ているので、少量の水では薬が溶けないうちに胃から排出され吸収部位を通り過ぎてしまい、十分な効果を発揮しない可能性があります。  また、水の温度も重要で体温よりも高い温度の方が薬は早く効きます。水が体温より低いと胃の中で体温に戻るまで排出しません。ですから、吸収部位が小腸にあるような薬は効くのが遅くなってしまいます。つまり痛み止めなど早く効いてほしい薬はぬるま湯で飲むのが一番効果的で、昔から薬は白湯で飲めといわれていましたが、その法則から考えると理にかなっています。  水分の中に含まれるカルシウムやカフェインについて薬剤師としては、カフェインは不眠・不安の誘発リスク因子となりますし、昇圧効果など循環器系に広く作用することを考えると、それらはコーヒー、お茶、エナジードリンク、医薬品などさまざまなものに入っているので、大きく影響するもので無いにしても全く関係のないものではないので多少は気になる部分です。  コーヒーは焙煎時に熱が多くかかるとカフェイン量は減ります。カフェイン量を心配してアメリカンコーヒーを選ぶ方もいますが、本来の製法で浅く焙煎されているアメリカンコーヒーは、実はカフェイン量が多いといわれています。ただ、日本のアメリカンコーヒーは一般的に薄めている場合も多いのであまり問題ありません。  牛乳などカルシウムを含む食品では、ニューキノロン系抗菌薬の薬剤成分がカルシウムと結合して吸収を妨げてしまうことが知られています。内服する際の水ですが、硬水はミネラルを多く含んでいるので、牛乳と同じような相互作用を起こす可能性があります。また、いまだに水なしで薬を飲む高齢患者さんが多いのも現状です。  実際にはジュースで飲んでも問題ない薬も多くありますし、食後に薬を飲むのであれば、食事中に水分が多く含まれているので水なしで服用しても問題のない場合も稀にありますが、その時の薬のタイプや服用時の効果などによって1つ1つ薬の飲み方を変えるのは、煩雑でかえって混乱を招くので、きちんとした臨床試験に基づいた薬の作用の発現や副作用の防止などの点を考えると、一律に「水または白湯で服用する」と統一した方が薬を飲む本人も混乱がなく薬の効果も期待できるのでよいのかと思われます。

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