予防医学コラム

子どもとコロナ その⑦子どもの重症例

子どもの新型コロナウイルス感染は、多くが軽症ないし無症状で経過し、重症化することはほとんどないとされています。軽症の理由として、ACE2受容体の発現量が子どもでは大人と比べ少ない、子どもは新型コロナウイルス感染に対する免疫反応が大人より弱く、宿主に障害を与えるような免疫反応の暴走(サイトカイン・ストーム)を誘導しない、など推測されていますが明らかではありません。
その一方で、欧米を中心とした諸外国では、一定の割合で重症化する小児例が報告されています。国内でも少数ながら重症となった小児がいることが明らかになっています。今年2月、埼玉県で基礎疾患のない、2回のワクチン接種が終了している10歳代後半の死亡例が報告されています。とくに小児の新型コロナウイルス感染の合併症で恐れられているのが、小児多系統炎症性症候群(MIS−C/PIMS)です。

●MIS−C/PIMSとは
新型コロナウイルスに感染してから2〜6週間後の回復時に、川崎病を疑わせるような多臓器に炎症を起こす病気です。
症状は、発熱、腹痛、下痢、全身臓器の障害、とくに心機能の低下がみられるのが特徴です。発疹、結膜炎、粘膜病変を生ずることもあるところが、川崎病と似ていますが、川崎病とは異なる疾患とされています。病態に過剰な免疫反応(サイトカイン・ストーム)と血管内皮障害が深く関わっていると考えられています。
発症年齢の中央値は8〜9歳と年長児に多く、症状についても川崎病とは異なり、腹痛、下痢などの消化器症状を伴うことが多く、急速に心不全、ショック症状を起こしやすいとされています。海外例ですが、7割が集中治療管理され、数%はECMOが必要となっています。新型コロナウイルス感染の回復期に、発熱以外に腹部症状(腹痛、嘔吐、下痢など)や循環器症状などの異常がみられる場合、MIS−C/PIMSを疑ってみる必要があります。
60%はPCR陰性(抗体は陽性)であり、PCR陰性でも否定できないことも注意点です。
過剰な心配は不要ですが、お子さんが新型コロナウイルスに感染した場合、あるいは家庭内などに新型コロナウイルス感染者がいる場合は、数週間はお子さんの下痢や発熱、発疹、ぐったりするなどの症状に注意してください。そのような症状がある場合は、診断をうけた医療機関にご相談ください。

≪ 顔面神経麻痺  |  アルコールアレルギーについて ≫