予防医学コラム

子どもとコロナ その④ 5〜11歳の新型コロナウイルスワクチン

5〜11歳に対する新型コロナウイルスワクチンは、3月から小児医療機関で接種が始まっています。オミクロン株感染もだいぶ落ち着いてきていますが、ワクチン接種に対してどう対応すればいいのか、悩まれているご家族はたくさんいらっしゃると思います。先日、小児科学会から「5〜11歳に対する接種の考え方」という提言がありました。以下にその内容を簡単にまとめます。
●感染状況とワクチンについて
1、感染したら5〜11歳の大多数は軽少だが、酸素投与などを必要とする中等症も散発的に報告されており、感染者数がさらに増えた際には、中等症や重症例が増える可能性がある。
2、2歳未満と基礎疾患のある子に関しては、重症化リスクがある。
3、感染以外にも日常の行動制限が子どもに影響を与えている。
4、現在使用できるワクチンはファイザー社製のみ。5〜11歳の発症予防効果は90%以上と報告(海外データ)されているが、オミクロン株に対するデータはまだ不明。
5、米国では、5〜11歳に1ヶ月半で870万回接種。副反応は2回の接種で局所反応(疼痛など)57・5%、全身反応(発熱など)40・9%。発熱は1回目で7.9%、2回目で13・4%。
6、上記と同時期に行われた別の調査では、重篤な副反応としては100件の報告があり、うち29件が発熱、11件が心筋炎だった。心筋炎はその後回復している。
7、副反応の出現頻度は16〜25歳の人に比べて低いとの報告あり。
●接種に対する考え方
1、子どもを守るためにはまずは周囲の大人(得に子どもに関わる業務従業者)が接種することが大切。
2、基礎疾患のある子への接種で、感染の重症化予防が期待される。接種の際は主治医とよく相談。
3、健康な子どもへの接種も意義があるが、本人と養育者の理解、接種にも関する細やかな対応が必要。
4、集団接種、個別接種いずれにおいても、接種の際は丁寧な診察が必要。
もっと簡単に要約するならば、「副反応は5〜11歳でも大差はない。持病のある子は接種を検討、健康な子の接種も意義があるがよく考えてからやりましょう。」となっており、接種は推奨するが積極的にしましょうという内容になっていません。いずれにしてもまだ判断に迷う内容かと思います。子どもに余計な侵襲を加えたくないという親心は当然ですし、もちろん小児科医としてもそう思います。ワクチンは本来自分を守るため、そして周囲の人も守るために行われるものですが、軽症の多いオミクロン株の流行化においては後者のウエイトが大きくなることも、年少者への接種を悩ませる一因かもしれません。現状としましては、持病のあるお子さんに関しては、周囲の状況(ご家族に高齢者や重篤な持病をもつ方がいるなど)も考慮にいれるとよいかもしれません。また流行状況で判断されても良いと思います。参考までに国立成育医療センターによる子どもや保護者を対象としたアンケート調査結果を図に示します。

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