予防医学コラム

難治性潰瘍

ヒトの体表はすべて皮膚で覆われていますが、皮膚がなんらかの原因で一部なくなると、通常は体を元に戻す機能が働いて治っていきます。治る期間は、部位や欠損の大きさや深さにより数日~数ヶ月まで様々です。
欠損が皮膚の表層までのものを『びらん』、深部まで及んだものを『潰瘍』といいます。治療に抵抗する潰瘍、すなわち治りにくい潰瘍のことを難治性潰瘍を呼びます。
その背景には、内科的な基礎疾患や創の治癒を妨げる複数の因子が存在する場合があり、それらの原因を明らかにして取り除くことが必要です。難治性潰瘍の原因は様々ですが、
●血液の流れが悪いために生じるもの
●糖尿病や膠原病などの内科疾患によるもの
●床ずれなど物理的な原因によるもの
●皮膚のがんなどによるもの
●熱傷などの外傷によるもの
●がんの治療に用いた放射線によるもの
●低栄養
●感染
などが挙げられます。
血液の流れが悪いために傷が治らない場合は、動脈の流れを改善する治療、流れの悪い静脈を抜去する治療などが検討されます。特に糖尿病や動脈血流が原因の場合は重症化して足を切断せざるを得なくなることもあるので、早めの受診をおすすめします。
治療は、軟膏で創の環境を整えて治していく方法や、最近は器具をつけて創傷治癒促進を図る方法(局所陰圧閉鎖療法)、また再生医療を利用した細胞治療も新しい治療法として始まっています。
保存的な治療では難しい場合は、皮膚移植や皮弁形成術などの手術を行うことがあります。


 

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