今回から、医学の歴史(医学史)ついてお話しします。
薬効目的の植物(薬草)が最初に用いられた時期を特定する記録はありません。おそらく人類が文字を用いる以前から薬草は用いられていたとも考えられています。
古代の医学として、記録に残るものを簡単に説明したいと思います。
■エジプト医学
エドウィン・スミス・パピルスに収録された医学知識は紀元前3000年頃のものとも言われており、知りうる限りエジプト最古の外科手術は、紀元前2750年に行われました。パピルスが紀元前1600年頃に記した著書は、古代の外科教本で、魔術的な思考をほとんど全て排除しており、数々の慢性病の検診・診断・処置・予後について詳述している。
■バビロニア医学
バビロニアの医学の記述は、紀元前2千年紀前半で、同時代のエジプト医学と同じく、バビロニア人は診断・予後・診察・処方の概念を取り入れた。『診断手引書』は、患者の兆候に対して検査・視診を行うことで、患者の疾患・病因および見通しや回復の機会を特定できる、という現代的な視点も含まれている。
■ヘブライ医学
紀元前1千年紀のヘブライ医学は伝染病の予防と抑制の知見が多く含まれ、衛生上の恩恵がもたらされました。
■ギリシア医学
古代ギリシア医学で有名なのはヒポクラテス(図1)で、呪術性を排した経験医学の嚆矢であるとされ、「医学の父」と呼ばれる。ギリシア医学は、後に「ヒポクラテス全集」としてヒポクラテスの名でまとめられました。ヒポクラテスの最も有名な文書は、医療倫理・任務などについての宣誓文「ヒポクラテスの誓い(図2)」であり、現代においても意義があり、また有用であります。
■ローマ医学
古代ローマでは、ギリシアの医師が活躍し、ローマ帝国各地の医学・薬学が集大成された。ローマ帝国で活躍したギリシア人のガレノスは、「血液・粘液、黄胆汁・黒胆汁」を基本体液とし、その調和を重視する四体液説を採用。豚や猿などの動物を解剖して人体の構造を推測したが、心臓の構造など誤りも少なくなかった。また多くの手術器具が発明され、鉗子、メス、焼きごて、剪刀、手術針、ゾンデ、膣鏡などがあります。また、初の白内障手術もローマ人によるものであるといわれています。
次回は、『医学の歴史(その2)』(中世から近代初期)についてお話ししたいと思います。