予防医学コラム

医学の歴史(その2)

中世から近代医学
今回は、医学の歴史(中世から近代医学)ついてお話しします。
前回、古代の医学史が薬草や伝染病予防から始まり、近代の基礎医学へと進歩していった事、ヒポクラテスが現代も医学の父として語り継がれている事を説明しました。近代医学では、ギリシア、ローマ医学を礎に進化していきます。
中世から近代初期ヨーロッパ医学
古代ローマ医学を基にベルギー人解剖学者・医師アンドレアス・ヴェサリウスやウィリアム・ハーベーなどの研究により、一般に認められた民間伝承が科学的に検証されるようになりました。彼の主著『人体の構造についての七つの書』は、古代ローマ医学のガレノスの著作や方式に大きく影響されていましたが、心臓、静脈体系、肝臓、子宮、上顎骨などに関するガレノスの誤りを証明しました。
医学の理解と診断は進歩しましたが、治療はあまり改良されず、健康への直接の利益は少なかったようです。
近代医学
化学や研究技術・施設の発展により、医学は19世紀以降に大変革を起こしました。
細菌と微生物が最初に観察されたのは、1676年、アントニ・ファン・レーウェンフックによる、顕微鏡を使った観察です。
イグナーツ・ゼンメルワイスは、1847年、分娩に立ち会う前の医師に手の洗浄を義務づけるだけで、産褥熱による死亡率を劇的に下げました。微生物と病気を結びつけて考えたパスツールは、医学に大変革をもたらしました。パスツールの実験によって病原菌説が立証され、ロベルト・コッホとともに微生物学を作り上げました。コッホはまた結核菌 (1882)・コレラ菌 (1883) の発見およびコッホの原則を作り上げたことでも有名です。
また医学上の治療における女性の参加はフローレンス・ナイチンゲールなどによりもたらされました。男性が支配的だった医療分野に、看護の基本的な役割を示し、衛生・栄養状態の不備による患者の死亡率を下げました。
第一次世界大戦などの大規模な戦争状況により、体内機能の監視のためX線や心電図を使用することが増えました。またサルファ薬などの選択的殺菌薬が初めて開発され、第二次世界大戦では、広範囲で効果的な殺菌療法がみられました。これはペニシリンの開発および大量生産によるもので、アメリカの製薬産業の協力がありました。
次回は、『医学の歴史(その3)』(日本の医学史)についてお話ししたいと思います。

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