予防医学コラム

古代のエナジードリンク、コカ・コーラ①

★ネットに掲載されていた情報ですが、コーラとフライドポテトが片頭痛に効果があるかもという説を真剣に研究している人がイギリスにいらっしゃるんだそうです。なんでもコーラに含まれるカフェインが血管収縮薬として働き、片頭痛の血管拡張を和らげてくれるとのこと。カフェインが市販の頭痛薬に含まれているのは、三叉神経の圧迫を抑制するためであると説明しています。もっともなことを言っていますが、コーラである必要がないのでは…。なお、ポテトは、糖分と塩分の摂取で血糖値や電解質を整えるのに役立つそう。やはり、ポテトじゃなくてもいいのでは…。この説については、ここまで読んで、はい解散といった感じですが、せっかくなのでコーラの話でもしましょう。
古代アンデスの「エナジードリンク」コカ…有名な話かもしれませんが、コカ・コーラのコカはコカインのコカとされています。まず、「コカ」とは何か。これは南米原産の植物「Erythroxylum coca(コカノキ)」のことです。アンデスの高地に暮らす人々にとって、コカの葉は古くから生活に欠かせない存在でした。標高3000メートル以上の酸素が薄い地域で、疲労を和らげ、空腹感を抑える物質として、もてはやされていたのです。葉っぱをくちゃくちゃと噛むと、気分がシャキッとする、いわば古代アンデスの「エナジードリンク」です。インカ帝国では儀式にも使われる神聖な植物でもありました。このコカの葉は、19世紀にヨーロッパに持ち込まれ、大旋風を巻き起こします。1855年、ドイツの化学者Friedrich Gaedckeがコカの葉から有効成分「コカイン」を抽出することに成功します。当初は学名から「erythroxyline」と命名されましたが、化学兵器として有名なマスタードガスを初めて合成したことでも知られるAlbert Niemannがコカインの単離法を改良し、さらにその性質を詳細に報告して「コカイン」と命名したのです。当初は、画期的な麻酔薬だということで医学界でも注目されます。精神分析の祖、ジークムント・フロイトもコカインにドはまりし、「これはうつ病にも効くし、疲れも吹き飛ぶ。万能薬だ!」などと絶賛していたようです。今から見れば、ただの依存症です。今ではご存じのとおり、コカインは麻薬に分類され、世界中で厳しく規制されています。

原口先生(薬剤師)のコラム   2025/09/22   gracom
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