ドラッグストアには、非常にたくさんの「総合感冒薬(風邪薬)」が並んでいます。薬剤師でも何を基準に選べば良いのかわからなくなってしまうこともありますが、今回はそんな総合感冒薬について、「カフェイン」を基準にして選ぶ方法を紹介します。
〇風邪のときに「カフェイン」を使うことのメリット。多くの総合感冒薬(風邪薬)には「カフェイン」が配合されています。この「カフェイン」は何を目的に配合されているのでしょうか。薬の説明書きや解説を読んでみると、「頭痛を和らげる」や「頭の重たい感じを解消する」といった書かれ方がしているため、多くの人は【頭痛の解消】が「カフェイン」の主たる目的だと考えがちです。
確かに、「カフェイン」はアセトアミノフェンやNSAIDsと併用することで頭痛に対する効果が高まるといった報告もありますが、基本的に風邪に伴う頭痛にはアセトアミノフェンやNSAIDsだけでも十分で、そこまで大きな意義はありません。では、「カフェイン」に期待される最大のメリットは何なのかというと、それは風邪によって低下した集中力や判断力の低下、【ぼんやりした感じ】を解消することにあります。
実際、風邪をひいた人間は集中力や注意力が散漫になり、作業効率が大きく悪化しますが、「カフェイン」を摂取すると、この能力低下が大きく解消され、【風邪をひいていないとき】と同じくらいにまで作業効率を回復させてくれることがわかっています。これは、風邪でも仕事や家事、勉強を頑張らなければならない人にとっては非常に重要な効果と言えます。
〇デメリットの方が大きいかもしれないケースでコロナ禍を経て、日本でも「風邪をひいた時は休む」という認識が広まりました。すると、これまでは【風邪でも仕事を休めない人】にとっては非常に有用だった「カフェイン」も、少し立ち位置が変わってきます。というのも、「カフェイン」を摂取すると、最低でも9~12時間程度は睡眠に悪影響が及ぶからです。さらに、普段あまりコーヒーや紅茶などをとらない人の場合、「カフェイン」の摂取で一時的に尿量が増えやすい傾向にあります。つまり、「薬を飲んでゆっくりと眠ろう」と考えている人の場合、「カフェイン」の入った総合感冒薬はむしろ療養の妨害になる恐れすらある、ということです。
風邪薬は、「常備薬」として自宅にあるものを使うケースも多いですが、もし薬局やドラッグストアで商品を選択する機会があれば、薬を飲んだ後にするのは「仕事や勉強」なのか、「ゆっくり休む」なのか、しっかりとコンサルタントしていくことが大切です。
〇コロナ禍を経て、最近の総合感冒薬トレンドは近年、「カフェイン」を配合していないことを売りにした総合感冒薬が多く新発売されています。これまでは「風邪でも仕事を休めない人」が総合感冒薬の主な購買層であったのに対し、コロナ禍を経て増えてきた「風邪なので自宅でゆっくり休む人」に向けた新商品が増えてきた、という事情が考えられます。