今回は、塩分についてお話しします。
私が日頃から外来で『塩分を控えてください』と何度も口にするのは何故なのかをお話ししたいと思います。また前号でも少しお話しをしましたが、寒冷地ならではの塩分過多についても触れてみたいと思います。
私達が普段食べている和食は、無形文化遺産 となり世界的にもヘルシーで健康的なイメージで大変注目されています。一方で醤油や味噌などを使った伝統料理が多く、塩分が非常に高い料理が多いのも特徴です。また、近年はライフスタイルの変化からファーストフードや外食・加工食品などを利用する人が多く、塩分を多く摂取しがちです。
厚生労働省『国民健康・栄養調査』
日本人の1日あたりの平均塩分摂取量は、男性で11g、女性9.3gと言われています。厚生労働省発表の目標値としては、高血圧の方は6g未満。腎臓病の方は5g未満とされています。またWHO(世界保健機関)では1日5g未満としています。
塩分過多による影響
塩分のとりすぎは身体にさまざまな弊害をもたらします。その代表ともいえるのが高血圧です。塩分が増えると、体は塩分濃度を一定に保つために水分をため込もうとします。その結果、血液の全体量が増え、心臓から送り出された血液は血管に強い圧力をかけながら全身をめぐるため、血圧が上昇するのです。高血圧の状態を長く放置していると、血管は圧力によって傷つきやすくなり、動脈硬化が進みます。その結果、狭心症や心筋梗塞などの心疾患、脳出血や脳梗塞などの脳血管疾患を引き起こす原因となるのです。 寒冷地の塩分は何故多い?
寒冷地では、味付けが濃く、塩分摂取量が高くなっています。これは、塩分を摂取することで体温を維持してきたからです。塩分摂取により、循環血漿量が増えて、血圧が上がるため、暖かい血流が末梢まで届くので、体温が維持できると考えられます。また、寒冷地では、1年の3分の1が氷雪に覆われるので、昔から収穫した食料を塩蔵して保存していたためです。
塩分過多についてお話ししましたが、いきなり減塩するのは大変です。まずは少しずつ塩分を減らしてみてはいかがでしょうか。
次回は、『減塩食』についてお話ししたいと思います。