前回のコラムで、飛蚊症(ひぶんしょう)の主な原因は、硝子体が加齢によって液状に変化し、網膜から外れてくる(後部)硝子体剥離であると解説しました。この際に、硝子体と網膜が強く癒着している部分があると、眼球の動きで網膜が引っ張られて、「網膜裂孔」という網膜の裂け目ができてしまうことがあります。網膜が引っ張られると、稲妻のように光が走る光視症(こうししょう)を感じることがあり、前兆の可能性があります。まれに外傷(ボールが目に当たるなど)でも網膜が裂けることがあります。その網膜裂孔から、液化した硝子体が網膜の下に流れ込むと、網膜が剥がれてしまいます。このような状態を「裂孔原性網膜剥離(れっこうげんせいもうまくはくり)」といいます。網膜がどんどんと剥がれ、急激な視野欠損や視力低下をきたし、最終的には失明してしまう、恐ろしい眼科救急疾患なのです。
網膜剥離の原因には、増殖膜組織が網膜を引っ張る「牽引性網膜剥離」や、網膜の下に水が滲み出して貯まる「漿液性網膜剥離」などもあります。これらはまたの機会に解説します。
◯診断には眼底検査を!
飛蚊症や光視症がある場合、「眼底検査」を実施します。現在の医療では、散瞳薬を用いて瞳孔を開いて、眼底の周辺部までしっかりと観察することが推奨されます。ここで網膜裂孔だけ見つかった場合と、網膜剥離まで起こっている場合とでは治療方法が異なってきます。
◯網膜裂孔にレーザー
網膜裂孔の場合、裂孔の周りをレーザーで焼き付けて、それ以上広がらないようにする「網膜光凝固術(もうまくひかりぎょうこじゅつ)」を行います。これは外来で行う治療であり、網膜が剥がれる前に治療すべきなので、通常は緊急的に行います。
◯網膜剥離の手術
網膜がすでに剥がれている場合、剥がれた網膜を元の位置に戻さなくてはなりません。これには手術室での治療が必要で、主に2種類の手術があります。一つは、シリコンのスポンジを眼の外側から押し当てて、強膜を凹ませて裂孔を閉じる「強膜内陥術(きょうまくないかんじゅつ)」です。比較的若く、硝子体の液化があまり進んでいない方に有効です。
もう一つは「硝子体手術(しょうしたいしゅじゅつ)」で、眼の内側から治療します。硝子体を出来るだけ取り去り、網膜裂孔への引っ張りを解除し、空気を使って網膜を元の位置に戻します。そして裂孔にレーザーをして、眼の中に長期間留まるガスを入れて手術を終わります。手術後はうつ伏せや、座位などの体位制限をして、網膜がくっつくように安静にします。
網膜剥離の治療は、再剥離との戦いです。出来るだけ初回の手術で治さないと、何度も再手術となり、最終的な視力も悪くなります。また黄斑部が剥がれて何日も経ってしまった場合、たとえ網膜がきれいに復位しても、良い視力はでなくなってしまいます(眼鏡をかけても何をしても視力が出ないという意味です!)。従って、網膜剥離の手術は、優れた技術と経験を持って、出来るだけ速やかに行う必要があります。当院では、大病院での豊富な経験を活かし、「日帰り」「臨時」手術にて、迅速に対応を行なっております。飛蚊症や光視症を感じたら、是非とも当院へご相談下さい。もしも網膜裂孔・剥離の場合は、的確に治療を行わせて頂きます!!