予防医学コラム

糖尿病網膜症の治療について

前回のコラムで、糖尿病網膜症は単純→前増殖→増殖と進行していくこと、黄斑浮腫という病状も視力低下の大きな原因の一つであることを書きました。今回はその治療についてです。
○血糖や血圧などのコントロール
糖尿病網膜症を発症・悪化させないために、基本となるのは、体の状態をできる限り正常に近づけることです。すなわち、血糖値を上げないこと(HbA1cを低く保つこと)、血圧を下げること、コレステロールを下げることなどが重要です。つまり、内科での治療をしっかりと頑張って頂くということです。「網膜症を治す薬はありますか」とよく聞かれますが、飲み薬でも目薬でもサプリでも、今のところ明確なエビデンスのあるものはありません。ブルーベリーを沢山食べても治りません。そもそも、網膜症を治す(治癒する)という概念はなく、進行を予防するという治療になります。
○レーザー治療(網膜光凝固)
単純網膜症や前増殖網膜症の初期は、血のめぐりはそこまで悪くもなく、経過観察します。しかし、網膜の血管がボロボロになってくると、酸素や栄養が欲しいというヘルプサインである「VEGF(血管内皮増殖因子)」がどんどん作られ、網膜上に新しい異常な血管(新生血管)が増殖してきます(増殖糖尿病網膜症)。このような状態、もしくはそれに向かって悪化している場合は、血のめぐりが悪い網膜をレーザーで焼きます。重症例では、網膜周辺全体をレーザーします(汎網膜光凝固)。このようにして、VEGFを作られにくくしていくことで、新生血管は枯れていきます。
○硝子体手術
新生血管はもろいため、破れて目の中に出血したり(硝子体出血)、「増殖膜」を形成して、網膜を引っ張って剥がしてしまいます(牽引性網膜剥離)。このような場合には、硝子体手術で目の中の出血や増殖膜を取り除きます。また、手術中にしっかりとレーザーを行います。増殖糖尿病網膜症の手術は、硝子体手術のなかでも難易度が高いと言われており、十分な経験と技術が必要な手術です。
○抗VEGF薬の硝子体注射
これまで書いてきたように、VEGFは諸悪の根源であるとともに、血管からの漏れを多くし、網膜の中央部がむくんで「黄斑浮腫」を起こします。このVEGFをブロックする薬剤を眼に直接注射(硝子体注射)することで、浮腫を減らす治療ができます。また虹彩に新生血管が出現して、眼圧が上がる「血管新生緑内障」という重症な状態にも、この注射を用いることがあります。
○白内障手術も重要
糖尿病では網膜症のみならず、白内障も年齢以上に進行しやすくなります。すると視力が下がってしまう上に、眼底もはっきりと見えないので、網膜症の正確な評価ができないことがあります。そのため、比較的若年者でも、白内障手術が必要になることがあります。
このような糖尿病網膜症に関わる治療は、当院が最も得意とする専門領域で、日帰りできちんと治療することができます。糖尿病網膜症で高度な医療が必要と診断された方は、是非ともご相談頂き、明るい未来に向けて、一緒に治療に取り組みましょう!

ishibazawa2410

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