眼科の手術と聞くと、どんな光景を思い浮かべられますか?眼という小さい臓器の手術なので、顕微鏡をのぞき込みながら、繊細な手術をやっている…それは確かに正解です。ただし、この手術のスタイルにも近年変化が見られてきました。世の中の様々な分野で、デジタル化が急速に進んでおります。身近なところで言えば、自動車のメーターもアナログの針から、デジタルに移行しつつあります。例えばナビ画面を全面に大きく表示したり、オーディオ画面や車両ステータス表示を、状況に応じて自分好みにカスタマイズできます。またフロントガラスに車速などを表示して、目線を動かさずに見れる「ヘッドアップディスプレイ」などもあります。眼科手術においても、このデジタルの強みを活かしたものが近年登場してきました。
【ヘッズアップ手術】
3Dデジタル手術では、顕微鏡の鏡筒の部分に3D映像を作るカメラが装着されます。そのため、顕微鏡をのぞき込むのではなく、3Dメガネをかけて、55インチの4K大画面モニターを見ながら手術をするスタイルとなります。執刀医や助手も皆、のぞき込むのではなく、顔を上げて画面を見ているので、この手術は通称「ヘッズアップ手術」と呼ばれています。この画面には手術機器の設定情報も入力され、術者は目線を動かさず、そのまま情報を確認しながら手術をすることができます。また、顕微鏡の照明を通常の2分の1〜3分の1くらいまで暗くしても、デジタル補正で十分手術ができるため、患者さんにとって手術中のまぶしさや、網膜への光障害を減らすことができます。このように患者さんに優しい手術となることが大きなメリットです。
【デジタルの凄さ】
デジタル手術では、高精細、高倍率な映像を大きな画面で手術ができるので、従来の手術よりも、細部まで手の行き届いた質の高い手術を行うことができます。デジタル映像加工技術により、映像をシャープにしたり、わざと白黒にして組織の境目をわかりやすくしたり、例えば青色に染色した組織だけを際立たせて見やすくしたりすることもできます。このような設定はあらかじめ保存しておいて、場面ごとに瞬時に切り替えることができるので、当院では7つのプリセットを保存して、適宜使い分けながら手術を行っております。
更にデジタルであるため、AR(拡張現実)技術で、手術野に様々なガイド映像を投影することができます。特に白内障手術では、乱視用眼内レンズの固定位置、多焦点レンズのセンターリングなどの表示ができるため、正確な眼内レンズの固定が可能となります。また、誤解がないようにお伝えするなら、あくまでも手術の術式内容は同じであり、保険診療内で手術料金が変わることはありませんので、ご安心ください。3Dデジタル手術は、より高精度な手術を行うための一手段です。このような技術革新は、患者様のより良い視力のために必要な進化だと私は考えており、全国学会でもそのような講演を行い、普及活動に努めております。オホーツクという地方においても、最先端の医療技術を地域格差なくお届けするのがオホーツク眼科の使命と捉え、これからもその技術を一層高めていきたいと考えております。