予防医学コラム

医療崩壊へ!?

新型コロナウイルス感染症の「抗ウイルス薬」は、1回の治療にかかる薬代だけで5~10万円になり、季節性インフルエンザの「抗ウイルス薬」は先発医薬品を用いても2、500~5、000円程度で収まることを踏まえると、非常に高額になっています。なぜこんな高額になっているのかと言うと、新薬の値段は既に類似薬が世の中にあるかどうか、新規性があるかどうか、という視点からなどで決められます。現在の薬価の決め方は「どの薬を類似薬とするか」によって新薬の値段は大きく変わることになります。特に『ゾコーバ』は、臨床試験で示された効果は“症状消失までの時間を24時間短縮させる程度のものであることを踏まえると、値段と期待できる効果にはかなり乖離があるように見えます。実際、重症化抑制の効果が報告されている他の薬と同じように算出するのが妥当なのかどうか、についてはかなり議論も分かれています。
認知症の薬の390万円や眼科の薬の1億円が新規に保険適応されているように医療費の増加が問題となっていて、必要な咳止め、抗生剤、高血圧、狭心症の薬などが枯渇して飲めない人が増えてる昨今の状況を踏まえると、今後は臨床成績を踏まえた薬価を算定できるような、新しい薬価の決め方に変わっていくかもしれません。今回の機会にぜひ新薬の値段の決め方についても少し興味を持ってもらえたらと思います。
元々はジェネリックメーカーの一部が不正を行ったり、書類の不備などがあり製造停止や製造中止が行われたのが発端ですが、国が医療費を抑えるために行ったジェネリックの推進が性急に行われたため、先発薬や新薬の開発を行うメーカーの減少や薬の減産、新薬からジェネリック医薬品への製造変更などから薬品業界の縮小などが起こったのが原因だと思います。
その結果、大手ジェネリックメーカーでも前年度から比べて純利益が86%も減少していると言う危機的現状で、中小メーカーはいつ倒産してもおかしくない状態で、そのメーカーでしか作っていない医薬品も多いので、患者さんが飲まなくてはならない薬がまた無くなるなる可能性があります。この根本には医療は儲かっていると言う誤解が未だに強くあるからではないかと思います。実際薬剤師の年収は商社などに勤務する方の⅓から¼程で医療に対する責務とボランティアの気持ちをもって働いている方も多いと思われます。
お医者さんも一般に給与が高いと思われていますが、実際の激務に対しての報酬としては割の合わないと思う学生が、医学部の受験を避ける傾向もあり地方ではお医者さんが足りないとも思われます。もちろん薬剤師も足りない状況であり悪い循環がさらに悪化しているようです。

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