予防医学コラム

涙道損傷

涙は涙腺で作られますが、目の表面を潤して乾燥を防ぎ、汚れを洗い流して、酸素や栄養を角膜に供給するといった役割があります。目の表面を通った後は、目頭にある涙点から涙小管、涙のう、鼻涙管をって鼻の奥へと流れていきます。涙点から鼻腔までの通り道を涙道といいます。  1日で作られる涙の量は大人で0.6〜1㎖、こどもで1.3㎖ほどで、まばたきをするごとに涙道を流れていきます。泣いたときに鼻水がたくさんでるのも、涙が涙道を通って流れてくるためです。
この通り道のどこかが詰まると、涙があふれ、目やにがたまりやすくなり、結膜炎などの目のまわりの炎症を起こすしやすくなります。結膜炎が生じると、涙腺が刺激されてさらに涙液を分泌するようになるため、悪循環が生じます。涙によって常に目が潤んだ状態で見えづらく、涙を流しながら生活するという非常に不便な状態になります。  
これらの涙の通り道が損傷を受けた状態を涙道損傷といいます。深い切り傷により涙道が断裂したり、涙道が通る上顎骨の骨折により骨がずれて管が閉塞することもあります。
上下にある2本の涙小管のうち、下涙小管が機能の多を担っているため、下涙小管損傷が治療の対象になります。断裂した管を縫合し、管内へシリコン性のチューブを挿入して管の癒着や狭窄を予防します。挿入期間は損傷の程度によって異なりますが、短くて2週間、長くて6ヶ月以上必要なこともあります。骨折にともなう場合は骨を適切に整復すれば管も再開通しますが、整復が不良であると閉塞したままとなります。このような場合は、涙のうから鼻腔へ直接涙が排出する様な経路を作る治療が行われます。

 

 

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