予防医学コラム

貧血について

皆さんご存知のように、貧血とは身体の血液が不足している状態です。もう少し詳しく説明すると、血液中の赤い血の成分である赤血球というものが不足していることを言います。赤血球は鉄分やビタミン、葉酸などを原料に骨髄で作られ、約120日すると脾臓で壊されます。それを人間の身体では繰り返し行っています。その為それらの材料が不足すると骨髄でうまく血液が作ることができなくなることで貧血は起こります。また脾臓で壊される赤血球の量が増えることででも貧血は起こります。中でも一番原因として多いのは、鉄分が不足して起こる鉄欠乏性貧血です。鉄欠乏性貧血の原因には、鉄分の摂取不足や腸管からの吸収不良、消化管出血やガン、身体の中の慢性炎症などによる鉄分の喪失などが挙げられます。女性の方はこの他にも、月経により定期的に血液を失っています。 ところで、貧血は何故身体に良くないのでしょう? 赤血球の成分の一つにヘモグロビンという成分があります。これは肺から取り込んだ酸素を、身体のあらゆる臓器に運搬する役割を担っています。その為貧血になると、身体の中に酸素が十分に取り込めなくなり、酸素不足となります。酸素不足がずっと続くと、臓器にダメージを与えてしまうため、酸素不足とならないように身体は頑張ります。その結果、少ないヘモグロビンの量で酸素を運搬するために、全身に血液を送るポンプの役割を担っている心臓が頑張ります。その為貧血になると、心拍数が増えて動悸の症状が出ます。特に坂や階段を上ったり、走ったりすると酸素が多く必要となるため、さらに動悸が強くなります。これが何十年も続くと、心臓がずっと頑張っている状態が続くため、心臓の機能が低下して慢性心不全となってしまうこともあります。その他の貧血の症状として、疲労感や息切れなども挙げられ、消化管出血などで急激な貧血を起こした際には、脳に酸素が十分運べなくなることで、意識障害や痙攣などの症状が起こることもあります。いずれにしろ、貧血の状態が続くと身体に悪影響を及ぼしますので、貧血の度合により適切な治療が必要となります。健診等で貧血が疑われた方は、消化管出血やガンなどによる貧血を否定した後、心臓などの臓器に負担をかけないためにも適切な生活習慣や食生活の改善、場合によっては鉄剤などによる内服治療をお勧め致します。

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本間先生(内科)   2025/05/23   M I
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