黄斑円孔(おうはんえんこう)とは、視力に最も重要な黄斑の中心部(中心窩)に穴が開いてしまい、視力が下がってしまう病気です。50歳以上の中高年者に見られることが多く、若い人にはほとんどみられません。発症率は中高年者の0.09〜0.3%程度です。女性の方が男性の2〜3倍多く発症し、高齢者、また強度近視眼のほうが発症率が高いと報告されています。通常、片方の眼に発症し、徐々に視力が悪くなりますが、時間差(数カ月~数年)でもう一方の眼もなることがあります。
○原因と症状
加齢に伴う特発性(特に原因がないもの)が最も多いです。硝子体と黄斑の癒着が強い人では、加齢と共に硝子体の収縮や後部硝子体剥離が起こり始めると、黄斑を引っ張るようになります。この引っ張りが強くなると、最も薄い黄斑部に孔ができます。他には、強度近視(病的近視)に伴うもの、打撲など外傷で起こるものもあります。見ようとする真ん中が見えなかったり、ゆがんで見えたりして(変視症)、視力が低下します。治療しないで放置すると、0.1 以下の視力になってしまいます。
○検査
眼底検査で発見はできますが、最も重要な検査は、網膜の断面検査である光干渉断層計(OCT)です。円孔の状態が一目でわかり、また円孔の大きさを正確に計測でき、治療方針の決定に役立ちます。
○治療(硝子体手術)
点眼や内服薬で円孔が閉じることは当然ありません。診断後、早いうちに硝子体手術を行います(白内障の手術も通常同時に行います)。円孔周囲の網膜表面の内境界膜という組織を極小のピンセットでつまんではがし、網膜を柔らかくします。円孔が大きい場合には、この内境界膜を円孔に被せて、閉鎖をうながすテクニックもあります。手術の最後に重要なのは、眼の中の水を空気やガスに置き換えることです。術後、数日間はうつ伏せをして黄斑部に空気(ガス)をしっかりと当てて頂きます。
当院では黄斑円孔の硝子体手術を、日帰りで日常的に行っております。手術時間は30分程度で、十分な局所麻酔(球後麻酔)と低濃度笑気麻酔で、ストレスなく受けて頂くことができます。またうつ伏せ用枕なども無料でお貸しして、お家でうつ伏せを頑張って頂いております。この疾患と診断を受け、日帰りでの手術をご希望の方は、網膜を専門とする当院へ是非ともご相談下さい。