予防医学コラム

子どもとコロナ その①

2020年1月に日本で最初の新型コロナウイルス感染(COVID-19)患者が報告されて以来、流行が周期的に起こり、まさに2020年、2021年はCOVID-19一色に染まった2年間であった感じがします。特に2021年7月からのデルタ変異株による第5波は、これまでかかりにくいとされていた小児、特に10歳代の感染者が増加し、これまでと少し異なった様相を呈していました。世界最悪の水準で感染が拡大したインドネシアでは、2021年7月毎週100人以上の子どもが亡くなっており、コロナ死者の30%を占めているというニュースが飛び込んできました。また米国では8月に入って18歳未満の新規入院患者が過去最多を記録、感染後の後遺症は当初、成人に多かったが、子どもにも目立つようになり、さらに英国で16歳以下の3万4千人が症状の長期化に苦しんでいるとの報道もなされています。第5波が終息した現在、幸いにもこれまで日本国内では10歳未満の小児のコロナによる死亡例の報告はありませんが、基礎疾患のある10歳代の3人の死亡例が報告されています。これまで感染しにくく、かりに罹患しても軽症でカゼと同等の感覚でとらえていた小児コロナに対し、その精神面での影響などいろいろ考慮しなければいけない問題が指摘されてきています。
小児科学会がまとめた「小児のコロナ感染に関する知見(2020、11)」を次に示します。
(疫学)
●COVID-19において小児の占める割合は少ないが、増加傾向にある。
●小児例の多くは家庭内感染である
●学校や保育所におけるクラスターが報告されるようになったが、社会全体から見ると多くはない。
●小児は成人より感染しにくい可能性がある。
●小児からの感染力が成人よる強いかは、まだ不明である、
(臨床)
●小児COVID-19症例は無症状〜軽症が多く、死亡例は少ない。
●COVID-19関連小児多系統症性症候群(診断基準)
(検査)
●鼻咽頭よるも便中に長期間そして大量に排泄される。
●抗体が陽性になった時点でもウイルスが検出される。また再感染が阻止できる抗体価に達するのは半数に過ぎない。
(治療)
●殆どの小児COVID-19症例は経過観察または対処療法が選択されている。
(新生児)
●COVID-19罹患妊娠・分娩において母体は集中管理を要するリスクが高く、早産になることが増えるが、垂直感染は稀である。
●現時点で経母乳感染の証拠はない。
●新生児が重症化しやすいかどうかはまだわかっていない。
(COVID-19流行期の子どもの心身の健康)
●学校や保育施設の閉鎖は流行阻止効果に乏しい。
●教育・保育・療育・医療福祉施設の閉鎖が子どもの心身に影響を及ぼしている。
これらの知見は、今回のデルタ株による第5波においても大きな違いはないようです。今後オホーツク地域の感染状況などを加味し、数回にわたって子どものコロナの問題を取り上げてゆきます。

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