日本の宗教のいろは

お経の成り立ち③

 前回に引き続きお経についてお話します。
前回までは、現存する最古の経典の話をしました。その後、仏教は南方に伝わり釈尊の教えを忠実に守ろうとして発展した上座部仏教と、釈尊が教えた心を中心に誰もが仏になる可能性を秘めていて、第一に他者を救うことを考えた菩薩の道を説く大乗(だいじょう)仏教に分かれ、大乗仏教は北伝して日本に伝わりました。乗とは乗り物を意味し、大乗仏教に対し、上座部仏教を小乗仏教と呼んでいたこともありましたが、現在は蔑視の表現にあたることを鑑みてほとんど使われません。
さて、その大乗仏教でも経典が存在し、まとめて大乗経典と呼ばれています。大乗仏教は釈尊入滅後数百年たってから成立し、その経典は、一般的に成立時期から初期・中期・後期に分けられています。
それぞれの特徴は、
【初期】…大乗仏教の中心的な考え方である「六波羅蜜(ろくはらみつ)」や「空(くう)」の思想が説かれ、阿弥陀仏などの仏が説かれた時期。『法華経(ほけきょう)』『華厳経(けごんきょう)』『般若経(はんにゃきょう)』「浄土三部経」である『無量寿経(むりょうじゅきょう)』『観無量寿経(かんむりょうじゅきょう)』『阿弥陀経(あみだきょう)』などが成立した。
【中期】…如来蔵(にょらいぞう)思想として、誰もが仏になる可能性を持っているという考えや唯識(ゆいしき)思想として、万物は心の意識によって存在しているという考えが打ち出された時期。『大集経(だいじつきょう)』『解深密教(げじんみっきょう)』『楞伽経(りょうがきょう)』『勝鬘経(しょうまんぎょう)』などが成立した。
【後期】…密教の諸経典が成立した時期。密教では釈尊ではなく大日如来が教え説くという形になっています。『大日経(だいにちきょう)』『金剛頂経(こんごうちょうきょう)』『理趣経(りしゅきょう)』などが成立した。つづく
グラコム2012年9月号掲載

  2012/08/25   gracom
≪ お経の成り立ち②  |  日本の仏教に関係の深い人物① ≫