日本の宗教のいろは

釈迦の教えについて⑦

今回は「悟りと涅槃(ねはん)」についてです。
皆様は、「釈尊が悟りを開いた」とか「悟りの境地に達した」などと耳にしたことがあるのではないでしょうか。悟りのもともとの意味は、原語のサンスクリット語では「ボーディ」、漢語では「菩提」です。「真理を追究しそれに目覚めること」と訳すことができます。
社会に生きている我々は日々、煩悩に悩まされ迷いながら生きています。しかし、釈迦は様々な苦行で真理を悟ろうとしましたが達することができず、快楽でもなく苦行でもないどのようなことにもかたよらない「中道(ちゅうどう)」が真理に目覚めることができる道である。ということで悟りを得たと言われています。
「涅槃」とは何でしょう。普段の生活ではあまり聞きなれない言葉ですが、仏教関連の美術では涅槃像とか涅槃図という表現がありますので聞き覚えのある方もいると思います。
涅槃とは、原語のサンスクリット語では「ニルブァーナ」といい、これは、「火を吹き消すこと」「吹き消した状態」を意味します。つまり、「煩悩の火を吹き消した状態」だと訳すことが本来の意味だと言われます。
先ほどの「悟り」とよく同じように使われることが多いのですが、「悟り」の境地に至った状態を「涅槃」と呼ぶことが本来の意味から正しいように思います。以前、「涅槃寂静(じゃくじょう)」という表現が、仏教の大切にしている考え方の「三法印」の一つであるというお話をいたしましたが、涅槃である状態は、煩悩がすべて取り払われている状態ですので、なにものにもとらわれることのない静けさがあるということから「涅槃寂静」という表現で表されているものと考えます。つづく
グラコム2012年3月号掲載

  2012/02/25   gracom
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