今回は「慈悲(じひ)」についてです。
仏教には「四無量心(しむりょうしん)」「四つの無量な心」という考え方があり、釈尊は悟りを開いて、次の四つの心を持っていたと言われています。
慈(じ)…与楽(よらく)といい、他者に楽を与えること。
悲(ひ)…抜苦(ばっく)といい、他者の苦を取り除くこと。
喜(き)…他者の喜びを素直に喜べること。
捨(しゃ)…自身の様々な欲を捨て去ることができること。
この四無量心の中にある「慈」と「悲」が「慈悲」の根源だと言われています。のちの大乗仏教では「慈悲」という言葉が大きく取り上げられるようになりました。
さて、この慈悲は「衆生縁の慈悲」「法縁の慈悲」「無縁の慈悲」という三つの段階に分けて考えられました。
衆生縁の慈悲とは、人々を対象にしたという意味で他者に対する抜苦与楽のこと。法縁の慈悲とは、仏法、つまり仏の教えを対象にした慈悲のこと。そして、無縁の慈悲とは対象がない慈悲で、仏教では「空」という教えがあるように何にもかたよらない、悟りを開いた仏が持つ慈悲のことを言っていると思います。
何だかよくわからなくなってきたかも知れません。
仏教における「慈悲」の本当の意味は、悟りを開く努力をしていくことによって見えてくるもので、生きている我々衆生が他者に対して思いやりの心を持ちながら、四無量心を持つための努力を惜しまないことが「慈悲」なのではないかと思います。つづく
グラコム2012年1月号掲載