日本の宗教のいろは

釈迦の教えについて⑤

今回は「輪廻(りんね)と業(ごう)」についてです。
仏教は、釈尊によってインドから広まりました。その当時のインドは、バラモン教(現在のヒンドゥー教)の社会で、人は前世の「業」により死後の生まれる世界が変わる「輪廻転生(りんねてんしょう)」の思想を持っていました。ただ当時の釈尊は、死後の世界について明確に答えを出していなかったため、輪廻転生の思想については、肯定も否定もしていなく、現世の中で功徳を積むことに重きを置いていたようです。
さて、前述の「業」とは「行為」という意味であり、自分の行為の結果は必ず自分自身に現れるという意味の「自業自得(じごうじとく)」は皆様もご承知だと思います。
ただし釈尊は、輪廻の思想にある前世の行いで現在が決められ、努力しても現状は改善できないということは否定していました。人は精進し、努力を重ねることで現世において悟りを得ることもできるという考え方を持っていました。つまり、宿命、神の意志などは否定したのです。
さて、釈尊が亡くなった後、ヒンドゥー教の世界で仏教を広めるために、輪廻転生の考え方を仏教も取り入れざるを得なくなったようです。そして生き物は生前の行いによって六つの世界「六道(りくどう)」に生まれ変わると考えました。この六道を輪廻することを「六道輪廻」と言っています。六道とは次の六つのことです。
【天道】…天人の住む苦の少ない世界。しかし煩悩はなくならない。
【阿修羅道】…阿修羅の住む争いや怒りの堪えない世界。
【畜生道】…人以外の動物の世界。ほぼ本能だけで、救いの少ない世界。
【飢餓道】…つねに飢えと渇きに苦しむ世界。
【地獄道】…裁きを受け、罪を償うための世界。
そしてこの六つすべては苦の世界であり、逃れるためには悟りを得ることしかないと言われています。つづく
グラコム2011年11月号掲載

  2011/10/25   gracom
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